2026 年 5 月、Zenn Trending で Vercel のコストを抑えるために Bot 対策する が話題になり、AI クローラーと悪性 Bot の急増で Vercel の月額請求が想定の 3 〜 10 倍に跳ね上がる事象が、受託で構築したコーポレートサイト / SaaS フロントで頻発しています。
これまで Vercel は 「Push すれば動く」 のシンプルさで採用されてきましたが、従量課金が Edge Requests / Image Optimization / Functions の 3 系統に細分化された結果、Bot 1 種類の挙動で複数メーターが同時に回る構造になりました。本記事では受託で 「請求ガード」 を設計する 2026 年版の手順を整理します。
なぜ Vercel 請求が急騰し始めたか — 3 つの構造変化
変化 1: AI クローラーが「画像最適化」を叩く
GPTBot / ClaudeBot / PerplexityBot などの AI クローラーは、OG 画像や記事内画像を全件取得します。Vercel の Image Optimization は 「変換ごとに 1 回課金」 されるため、1 ページの OG 画像で月 5 万回最適化が走るケースが珍しくなくなりました。
変化 2: スクレイパー Bot がページ全件を叩く
価格情報・在庫情報・記事本文を狙うスクレイパーは Edge Requests を 1 日 10 万回単位で発生させます。Vercel の Edge Request は 「キャッシュヒットでも課金対象」 の場合があり、CDN コストの設計を誤ると 1 桁高い請求になります。
変化 3: Server Functions のコールドスタートが頻発
Bot が キャッシュ外パス を叩き続けると、Server Functions が常時起動し、実行時間 = 課金対象が長く積算されます。これは Vercel Open Agents 保守受託 で扱った Agent ホスティングの議論と同じ構造です。
受託でよくある「請求事故」3 パターン
| パターン | 引き金 | 月額インパクト |
|---|---|---|
| OG 画像爆撃 | AI クローラー + Image Optimization | +5 〜 30 万円 |
| 記事スクレイピング | 競合 Bot + Edge Requests | +10 〜 80 万円 |
| ISR 再生成ループ | 不正アクセス + Functions | +3 〜 20 万円 |
特に OG 画像爆撃は 「予算超過の通知が来た時には既に高額」 という非可逆性が問題で、事前の請求ガード設計が必須です。
請求ガードの 4 層設計
受託案件で 「請求事故をゼロにする」 ためには、4 層の防御を契約初期から仕込みます。
層 1: エッジで止める(Cloudflare 前段)
Vercel の前に Cloudflare を挟み、Bot Fight Mode / AI Audit / Rate Limiting で Vercel に到達する前に Bot を遮断します。これは Cloudflare AI Labyrinth スクレイパー防衛 と同じ思想で、「Vercel が見るリクエストを 1/10 に減らす」 ことが請求圧縮に直結します。
層 2: ホスト側で識別(middleware.ts)
Vercel の middleware.ts で User-Agent / IP / Cookie をチェックし、未知 Bot は 403 / robots.txt 経路に誘導します。Cloudflare をすり抜けた Bot を Vercel の Edge Middleware(無料枠あり) で安価に止める層です。
層 3: Image Optimization の Whitelist 化
next.config.js の images.remotePatterns を 「自社ドメインのみ」 に限定し、外部 URL からの最適化リクエストを構造的に防ぎます。OG 画像も 静的生成 + Cloudflare Cache に逃すパターンが安価です。
層 4: 請求アラートの自動化
Vercel の Spend Management で 月額予算アラートを設定し、閾値超過時に Slack / メール通知 + 自動シャットダウンを仕掛けます。これを 「契約初期に必ず設定する」 ことを受託の合意事項に含めます。
Vercel vs Cloudflare Pages の選択基準
| 項目 | Vercel | Cloudflare Pages |
|---|---|---|
| Edge Request 単価 | 高め(細分化課金) | 低め(包括的) |
| Image Optimization | 変換ごと課金 | Polish 含む包括 |
| Bot 対策標準 | 別途設定 | 標準で強力 |
| Next.js 互換 | フル対応 | 一部制約あり |
| エンタープライズ予算 | 月 50 万円〜 | 月 20 万円〜(同等規模) |
「Next.js を活かす + 請求ガードを設計する」 なら Vercel、「Astro / Hono + コスト最適化」 なら Cloudflare Pages、という選択が 2026 年式の基本線です。Astro 構成の場合は Hono Cloudflare Workers エッジ API ガイド と組み合わせると効果が最大化します。
受託契約に書く「請求ガード条項」
| 条項 | 内容 | 顧客が確認すべきこと |
|---|---|---|
| 月額予算上限 | Vercel Spend Management の上限額 | 月次の業務影響範囲 |
| Bot 識別ポリシー | 許可 Bot / 拒否 Bot のリスト管理者 | 既存 SEO クローラーへの影響 |
| 緊急シャットダウン基準 | 異常トラフィック検知時の停止判断 | 顧客側の連絡フロー |
| Cloudflare 併用責任 | 前段 CDN の管理主体 | DNS 切替時のダウンタイム |
| インシデント対応 SLA | 請求急騰検知から対応開始まで | 営業時間外の連絡可否 |
特に 「緊急シャットダウン基準」は 「請求 100 万円超で自動停止」 のような 数値で書くことが重要です。「様子を見る」 という曖昧な合意は事故を生みます。
価格モデル — Vercel 請求ガード受託パッケージ
| プラン | 金額 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|---|
| Audit | 30 万円〜 | 1 週間 | 現状診断 + 改善提案 |
| Lite | 120 万円〜 | サイト 1 つ | 4 層設計実装 + Cloudflare 前段化 |
| Standard | 350 万円〜 | サイト 3 つまで | 上記 + 監視ダッシュボード + 月次運用 |
| Enterprise | 800 万円〜 | 大規模マルチサイト | 上記 + DR + 24/7 監視 |
ハマりやすい 4 つの落とし穴
落とし穴 1: 「Vercel Pro なら大丈夫」と誤解
Vercel Pro は 包括的な上限がなく、Bot トラフィックは 従量課金で青天井です。Pro 契約は 請求ガードの代替にならないことを顧客に説明します。
落とし穴 2: Cloudflare 前段化で SSR が壊れる
Cloudflare で過度にキャッシュすると、Next.js の SSR / ISR が意図せずキャッシュされる事故が起きます。「動的ルートはキャッシュバイパス」 のルールを明示します。
落とし穴 3: Image Optimization をオフにすると LCP が悪化
リサイズと WebP 変換をやめると Core Web Vitals が悪化し、SEO に影響します。「静的生成 + Cloudflare Polish」 で代替する設計を準備します。
落とし穴 4: robots.txt だけでは止まらない
行儀の悪い AI クローラーは robots.txt を無視します。User-Agent ベースの 403 返却を必ず併用します。
まとめ — 「動く」から「請求が壊れない」へ
Vercel の構造変化は、「Push すれば動く」時代の終わりを意味します。受託案件では 「請求ガード」を契約初期に設計することが、顧客の月次 P/L を守る最大の責任です。
弊社では Audit / Lite / Standard / Enterprise の 4 段階で Vercel 請求ガード受託パッケージを提供しています。「Vercel の請求が突然 10 倍になった」「AI クローラーで OG 画像のコストが止まらない」というご相談は お問い合わせフォーム からお気軽にどうぞ。