「システムは無事に納品されて、しばらくは順調でした。ところが半年後、ある日突然エラーで止まって。開発会社に連絡したら『保守契約は結んでいないので、都度お見積もりになります』と言われ、対応にも数日かかりました。その間、業務が止まって大変でした」——業務システムを外注した会社の担当者から、こんな話を聞きました。システムは、作って引き渡せば終わりではありません。作った後、それを安全に動かし続けるための費用と体制が、必ず別に必要になります。ここが発注時の話から抜け落ちていると、トラブルのときに初めて「何も決めていなかった」と気づくことになります。
サイトや業務システムを発注するとき、多くの人の関心は「いくらで、いつできるか」に向きます。ですが同じくらい大事なのが、「動き始めた後、誰が・どこまで面倒を見るのか」です。本記事では、保守・運用契約で発注者が確認しておくべき点を整理します。
「保守」に含まれるものは会社ごとに違う
まず知っておきたいのは、「保守契約」という言葉が指す範囲が、開発会社によってまったく違うことです。ある会社の保守は「重大なバグを直すだけ」で、別の会社は「監視・バックアップ・小さな改修まで含む」といった具合です。契約書に「保守月額◯万円」とだけ書いてあっても、中身を確認しないと、何が含まれて何が別料金かが分かりません。
発注者として最初に確認すべきは、次の4点がどう扱われているかです。
| 確認すること | 抜けていると起きること |
|---|---|
| 不具合の修正はどこまで無償か | 「それは仕様なので別料金」で想定外の出費 |
| セキュリティ更新は誰がやるか | 脆弱性が放置され、乗っ取り・情報漏洩の火種に |
| 障害時にいつまでに対応するか | 「対応は数日後」で業務が止まったまま |
| 小さな改修は保守に含むか都度見積もりか | ちょっとした変更のたびに見積もり待ち |
とくに見落とされがちなのがセキュリティ更新です。システムは作った瞬間から古くなり始め、使われている部品に新たな脆弱性が見つかります。誰も更新しないまま放置されたシステムは、時間とともに危険になっていきます。この「作った後も直し続けないと危うくなる」構造は技術的負債を経営リスクとして捉える記事で詳しく扱っています。
「いつまでに対応してくれるか」を数字で決める
障害が起きたときに最も困るのは、「いつ直るのか分からない」状態です。これを防ぐのが、対応の速さや品質をあらかじめ数字で約束しておく取り決め——いわゆるSLA(サービス品質の合意)です。難しく考える必要はなく、「連絡してから何時間以内に一次対応するか」「月にどれくらいの時間まで止まってよいとするか」を、契約時に具体的な数字で決めておく、というだけです。
もちろん、対応が速く手厚いほど費用は上がります。24時間365日すぐ対応してもらう体制は、多くの中小企業のシステムには過剰かもしれません。大事なのは、自社の業務が「何時間止まると困るのか」から逆算して、必要な水準を選ぶことです。ここを開発会社任せにすると、過剰な保守料を払うか、逆に手薄すぎて業務が止まるかのどちらかになります。
「その会社しか直せない」状態を避ける
保守契約でもう一つ大事なのが、「その開発会社でなければ手が出せない」状態を作らないことです。保守を頼んでいる会社と連絡が取れなくなったり、料金が急に上がったりしたとき、他社に引き継げなければ、発注者は身動きが取れません。そのためには、システムの構成や設定が文書として残されているか、アカウントの管理権限が自社側にあるかを、保守契約の段階で確認しておく必要があります。
この「乗り換えられる状態を保つ」考え方はベンダーロックインを避ける発注の仕方で整理しています。Webサイトでも同じことが起きており、作った会社と連絡が取れないサイトの引き継ぎは典型的な失敗例です。保守は「囲い込まれる」ためではなく、「安心して動かし続ける」ために結ぶもの、という前提を忘れないでください。
発注の見積もりに「動かし続ける費用」を並べる
システムの費用は、作る費用だけではありません。作った後、動かし続けるための月額が必ずかかります。ここを最初の見積もりに含めずに発注すると、稼働後にじわじわと想定外の出費が積み上がります。発注の段階で「初期費用」と「毎月の保守・運用費用」を並べて提示してもらい、その保守に何が含まれるのかまで確認してください。
「保守契約の中身が曖昧で、何が別料金か分からない」「障害時にいつ対応してもらえるのか決めていない」「今の開発会社以外に引き継げるか不安」——そうしたお悩みがあれば、グリームハブのシステム開発・運用支援へお気軽にご相談ください。作って終わりにしない、安心して動かし続けられる体制づくりを、発注の段階からご一緒に設計します。