「ChatGPT にうちの会社のことを聞いたら、料金体系も主力サービスも間違って答えられた」——最近、こうした相談が増えています。検索エンジンだけでなく、対話型 AI やエージェントが企業情報の「入り口」になりつつある今、問題は深刻です。人間が見れば一目で分かるはずの料金表が、AI には「ただの装飾された数字の羅列」にしか見えていない。画像に焼き込んだ事業内容は、そもそも読み取られてすらいない。こうして、自社が意図しない説明が独り歩きしていきます。
この流れに対して、Google は 2026 年 6 月 13 日、AI エージェントと人間の両方が扱いやすいオープンな文書記述仕様「Open Knowledge Format(OKF)」を発表しました。背景にあるのは、「Web ページは人間の目を前提に作られてきたが、これからは AI が読むことも前提にする必要がある」という認識の転換です。OKF そのものはまだ新しい仕様ですが、ここで問われている「AI に正しく読まれる情報設計」は、仕様の流行り廃りに関係なく、今すぐ手を打てるテーマです。
なぜ「人には読めるのに、AIには読めない」が起きるのか
AI がサイトの情報を取り違える原因は、だいたい次のどれかに集約されます。
| 症状 | よくある原因 |
|---|---|
| 料金・スペックを誤って引用される | 表が画像化されている/CSS で見た目だけ整えた擬似テーブル |
| 事業内容を捉え違える | 結論が装飾的なコピーに埋もれ、何の会社か明示されていない |
| 古い情報で答えられる | 更新日が構造化されておらず、AI が鮮度を判断できない |
| そもそも引用されない | 重要ページが JavaScript 描画頼みで、取得時に中身が空 |
共通するのは、「見た目の情報」と「機械が読める情報」がずれていることです。人間は文脈や画像から意味を補完できますが、AI エージェントは基本的にマークアップされた構造とテキストしか手がかりにできません。デザインを優先するあまり、肝心の情報が機械から見えなくなっている——これが根っこの問題です。
「AIに読まれる」を構成する3つのレイヤー
OKF のような新仕様を待たずとも、AI 可読性は今ある技術で底上げできます。受託でサイトを設計するとき、私たちは次の 3 レイヤーで整理します。
- 意味が伝わる HTML 構造:見出し階層(h1〜h3)を装飾でなく意味で使い、料金やスペックは本物の
<table>で記述する。結論を冒頭に置き、画像内の文字には必ず代替テキストを添える。 - 構造化データ:Schema.org(
Organization・Product・FAQPageなど)で、会社・サービス・料金・更新日を機械可読な形で明示する。この基礎は 構造化データでAI検索に拾われるサイトにする(GH Media) で詳しく整理しています。 - AI/エージェント向けの入り口:
llms.txtや OKF のような「AI に読ませる前提の文書」を用意し、サイトの全体像・主要ページ・要約を機械が一望できるようにする。
ポイントは、この 3 つは独立ではなく重なっていることです。HTML 構造が雑なまま構造化データだけ足しても、AI は矛盾した情報の間で迷います。土台の HTML から積み上げるのが結局いちばん効きます。
SEOの「その先」としてのAI可読性
ここで一つ注意があります。AI 可読性は SEO の置き換えではなく、SEO の延長線上にある別レイヤーだということです。検索結果で AI による要約(AI Overview)が上に出るようになり、「1 位なのにクリックされない」現象が広がっています。この変化への対応は AI Overview時代のコンテンツ戦略(GH Media) でも扱いました。
従来の SEO が「検索エンジンに見つけてもらう」最適化だったのに対し、これからは「見つけた AI に正しく引用してもらう」最適化が加わります。両者は競合しません。意味の伝わる HTML と構造化データは、検索エンジンにもエージェントにも同時に効く投資です。自社サイトが「AI から見て準備できているか」を点検する観点は サイトを”エージェント対応”にするリニューアル(GH Media) にもまとめています。
受託での進め方 — まず「AIに聞いてみる」監査から
私たちが AI 可読性の改善を受託する場合、最初にやるのは派手な実装ではなく、現状の棚卸しです。実際にあるクライアント(製造業、社名は伏せます)の案件では、こう進めました。
- ChatGPT・Gemini に「この会社は何をしている?」「主力製品の価格は?」と聞き、誤りを一覧化する
- 誤答の元になっているページを特定し、原因を「画像化」「JS 描画」「構造化データ欠落」などに分類する
- 影響の大きい料金・サービス・会社概要ページから、HTML 構造の修正と構造化データの付与を進める
- 修正後、再び AI に同じ質問をして、説明が改善したかを確認する
この案件では、料金表を画像から本物のテーブルに直し、Product の構造化データを足しただけで、対話型 AI が価格を正しく答えるようになりました。大掛かりなリニューアルは不要で、「機械から見えていなかった情報を、見えるようにする」だけで成果が出たのです。
まず、自社をAIに聞いてみることから
AI 可読性の改善は、新しい仕様を導入することから始まるのではありません。まずは ChatGPT や Gemini に自社のことを聞いてみて、「どこが間違って伝わっているか」を確かめてください。そこに出てくるズレが、そのまま優先順位の高い改善ポイントになります。誤答の原因が画像化なのか、構造化データの欠落なのか——その切り分けと修正を、私たちは受託でお手伝いしています。