
自社のサービス名を AI アシスタントに聞いてみて、返ってきた説明が古かった、あるいは競合の情報が混ざっていた——という経験はないでしょうか。「AI に正しく載る」ための施策として構造化データや文章の書き方が語られますが、その手前で、そもそもページの中身が読み取られていないケースがかなりあります。
読み取る側の事情が、2026年8月にはっきり見える形で出てきました。Cloudflare が発表した Kitesurf は、AI エージェント専用に作られたブラウザです。何を実装して何を捨てたのかが公開されているため、これから自社サイトが「誰に読まれるか」を具体的に考える材料になります。
エージェント用のブラウザは、何を捨てたか
Kitesurf は Chromium を使っていません。Cloudflare Workers の V8 isolate 上で動き、レンダリングは Blitz 由来のモジュラーなエンジン、CSS の解析は Firefox の Stylo、JavaScript の実行は Rust 製の Boa という構成です。
削られたのは、人間が見るために必要だがエージェントには要らないものです。タブ、拡張機能、テーマ、ピクセル単位で正確な描画、滑らかなスクロール。その結果、14 の URL を対象にした計測で、スクリーンショット取得の CPU 使用量は Chromium の約3分の1、HTML 抽出では約4分の1、メモリは用途によって5分の1から7分の1まで下がったと報告されています。
一方で、現時点では動画、WebGL、TLS を使ったボット判定への応答、長期間の認証セッションには対応していません。Chromium の置き換えではない、と明言されています。
| 観点 | 人間向けブラウザ | エージェント向けブラウザ |
|---|---|---|
| 重視するもの | 見た目の正確さ・操作の快適さ | 取得の速さ・処理コストの低さ |
| JavaScript | フル機能のエンジン | 軽量エンジン。重い実行は前提にしない |
| 想定する滞在 | ログインして長く使う | 開いて取って閉じる |
ここから読み取れることは1つです。エージェントは「安く読める情報」から読みます。 そして、安く読めるかどうかを決めているのはサイト側です。
サイト側で効く確認は3つ
大がかりな作り替えの前に、次の3点を自社サイトで確認してみてください。
1. 本文がサーバーから返る HTML に含まれているか。 ブラウザで「ページのソースを表示」して、サービス名や価格、営業時間といった重要な情報が文字として見えるかを探します。見えない場合、その情報は JavaScript の実行後にしか現れません。人間のブラウザでは問題なく表示されますが、軽量なエンジンで取得している側からは存在しない情報になります。
2. 意味のあるタグで書かれているか。 見出しが div に大きな文字サイズを当てたものになっていないか、リンクが a 要素になっているか、フォームの入力欄に label が紐づいているか。人間は見た目で判断できますが、エージェントは構造で判断します。ここは検索エンジン向けの基本と重なる部分で、構造化データと AI 検索で扱った内容がそのまま効きます。
3. 重要な情報を画像に埋めていないか。 料金表や対応エリアを画像1枚で作っているサイトは今も多く、この形は読み取られません。

この3点は、いずれもアクセシビリティの改善とほぼ同じ内容です。新しい対応が増えたというより、後回しにしてきたものの請求書が届いた、と捉えるほうが実態に近いと思います。
「読ませない」判断も設計のうち
すべてのエージェントを歓迎する必要はありません。コンテンツを丸ごと持っていかれるだけで自社に何も返ってこないなら、止める判断も当然あります。
ただし、止め方には順序があります。まず、どのエージェントが実際に来ているのかをアクセスログで確認すること。User-Agent を名乗っているだけの偽物が相当数いるため、名前だけで判断すると本物を弾いて偽物を通すことになります。検証の手順はAIクローラーを名乗るアクセスの見分け方にまとめました。
そのうえで、「引用されたい情報」と「取られたくない情報」を分けます。会社概要・サービス内容・料金の考え方は引用されたほうが得で、有料記事や個別の事例資料は違う。この線引きを機械が読める形で置く方法はllms.txt で引用のされ方を設計するで扱っています。
なお、Kitesurf が現時点で TLS ベースのボットチャレンジに対応していないという事実は、裏を返せばチャレンジを入れるとエージェントは通れないということです。問い合わせフォームの手前に重い認証を置くかどうかは、防御と機会損失のどちらを取るかの判断になります。
次にやること
まず、自社サイトのトップページと主要なサービスページで、ソースに本文が含まれているかを確認してください。 確認は数分で終わります。含まれていなければ、それが最優先の課題です。
そのうえで、サイトのリニューアルを検討しているなら、要件に「サーバー側で本文を返す」を1行入れてください。 実装方式を後から変えるのは高くつきますが、最初に決めておけば追加費用はほとんど発生しません。
サイトが AI や検索から正しく読まれる構造になっているかの診断、リニューアル時の実装方式の選定については、グリームハブの HP制作・リニューアル相談で承っています。現在のサイトの作り方によって直し所が変わるため、個別にご相談ください。お問い合わせからどうぞ。




