
監査や取引先のセキュリティチェックシートで、こう聞かれたことはないでしょうか。「社外のユーザーと共有されているファイルは何件ありますか」。
多くの組織で、この質問には即答できません。管理コンソールを開いても、出てくるのは「共有された回数」の推移や、個別ファイルの共有状態だけです。組織全体で、いま外部に出ているものが何件で、そのうち誰でも開けるものがいくつあるのか——この形の一覧を作るのが、ずっと難しいままでした。
理由は、外部に出る経路が1つではないからです。2026年8月から段階的に展開されている、ドライブ インベントリ レポートの新しいフィールドは、ここに手を入れています。
外部共有は3つの経路で成立する
ファイルが社外の人に見える状態になるまでには、次の3つの経路があります。
| 経路 | 記録のされ方 | 棚卸しの難しさ |
|---|---|---|
| 直接共有 | ファイルの権限に個人のアドレスが載る | 一覧化はできるが件数が膨大になる |
| グループ経由 | 権限にはグループ名しか載らない | 中に外部ユーザーがいるかは別途調べる必要がある |
| リンク公開 | 「リンクを知っている全員」の設定 | 権限一覧には個人が現れない |
やっかいなのは真ん中です。権限には社内グループの名前しか書かれていないのに、そのグループに1人でも外部メンバーが入っていれば、実質は外部共有です。グループのメンバー構成は時間とともに変わるため、ある時点のファイル権限だけを見ても答えが出ません。
これまでインベントリ レポートを BigQuery に出していた組織でも、この突き合わせは自前の SQL で書く必要がありました。グループのネストがあると、それ自体がそこそこの開発になります。共有リンクの側から棚卸しする手順はドライブの共有リンクを棚卸しして止めるにまとめていますが、権限の一覧から攻める場合は、この3経路の合流点をどこかで作らなければなりません。
追加されたのは「突き合わせ済みの答え」
今回追加されたのは、直接権限・グループのメンバーシップ・公開リンクを自動的に統合して、外部への露出を示すシグナルとして持たせるフィールドです。組織側で経路ごとの表を JOIN する作業が、レポート生成側に寄りました。
あわせて、相手が人間のユーザーなのか、サービスアカウントなのか、ウェブに公開されているものなのかを区別できるようになっています。これは実務でかなり効きます。外部共有の一覧を出すと、たいてい件数の上位に連携ツールのサービスアカウントが並び、本当に見たい「取引先の個人アカウント」が埋もれるからです。既存の DLP のメタデータと突き合わせれば、機密度の高いデータから優先して手を付けられます。

なお、この機能は BigQuery へのエクスポートを前提としたものです。ドライブのインベントリ レポート自体を使っていない組織では、まずそちらの設定から始まります。BigQuery に出したデータを情シス以外の人にも見せる形にする方法はConnected Sheets で BigQuery のデータをセルフサービス化するで扱いました。
既定はオフ。有効にする前に決めること
この計算は既定でオフです。管理コンソールのドライブ インベントリ レポート設定にある「External sharing calculations」で有効化します。2026年8月14日から段階的に展開されており、設定が見えるまで最大15日ほどかかります。
有効にする前に、3つ決めておいてください。
- レポートの配信が遅れてよいか。 大きな Google グループを多用している組織では、この計算のぶん処理時間が延び、レポートの配信スケジュールに影響します。夜間バッチで別の集計につないでいる場合は、先に依存関係を確認してください。
- 誰がこのデータを見るか。 外部共有の一覧は、そのまま「どのファイルを狙えばよいか」の地図にもなります。BigQuery 側の閲覧権限を、管理コンソールの管理者権限とは別に設計する必要があります。
- 出てきた件数をどう扱うか。 初回の実行では、想定よりはるかに多い件数が出ます。ここで「全部止める」に走ると業務が壊れます。次のセクションの順序で進めてください。
出てきた一覧は、上から順に消さない
棚卸しでいちばんよくある失敗は、件数の多さに驚いて、外部共有そのものを一括で禁止することです。取引先との進行中の案件が止まり、数日後には個人のドライブや無料のファイル転送サービスに逃げます。可視化する前より状況は悪くなります。
出てきた一覧は、次の順で絞り込むと実務に乗ります。
まず、ウェブに公開されているものを見ます。件数は少ないはずですが、リスクの性質が他と違います。ここだけは相手が特定できないため、業務上の必要性を確認したうえで個別に判断します。
次に、最終更新が古く、外部共有だけが生き残っているもの。案件が終わったのに権限だけ残っている典型で、止めても業務影響がほぼありません。ここが棚卸しの主戦場になります。
最後に、現在も更新されている外部共有。これは止める対象ではなく、共有ドライブに寄せて権限をロールで管理する対象です。個人のマイドライブに置いたまま外部共有している状態が残っていると、担当者の退職時に同じ問題が再発します。権限をロールで設計する考え方は共有ドライブの権限ロールをどう配るかに整理しています。
次にやること
まず、自社がドライブ インベントリ レポートを BigQuery に出しているかどうかを確認してください。 出していないなら、今回のフィールド追加は「使える状態にする」ところからの話になります。出しているなら、設定画面に External sharing calculations が現れているかを見て、現れていれば夜間の処理時間に余裕があるかを確認します。
そのうえで、初回の一覧を誰と一緒に見るかを決めておいてください。 情シスだけで見ると「止めるか残すか」の判断がつかず、そのまま塩漬けになります。案件の状況を知っている部門の担当者を1人入れておくと、最初の絞り込みが一気に進みます。
Google Workspace の外部共有の棚卸し、共有ドライブへの移行と権限設計、インベントリ レポートの BigQuery 連携については、グリームハブの IT・Google Workspace 無料相談で承っています。組織の規模とグループの使い方によって進め方が変わるため、個別にご相談ください。お問い合わせからどうぞ。
Sources
- Enhanced external sharing insights now available in Drive Inventory Reporting — Google Workspace Updates
- Google Workspace Weekly Recap — August 21, 2026
- Export your organization’s Drive inventory — Google Workspace Admin Help
- Schema and example queries for Drive inventory exports in BigQuery — Google Workspace Admin Help




