
先月、同じ資料を開いて同じ説明をした回数を数えてみてください。新入社員向けの業務フロー、取引先への提案の前段、社内システムの使い方。3回を超えているなら、その説明は録画に向いています。
録画に切り替えられない理由は、たいてい「面倒だから」です。画面録画ツールを起動し、ファイルを書き出し、ドライブにアップロードし、共有設定を直し、リンクを貼る。この5工程を思い浮かべた時点で、「次の会議で口頭で説明したほうが早い」という結論になります。2026年8月20日から展開されている Google スライドの新しい録画機能は、この工程の数を削りにきています。
変わったのは録画の質ではなく、始めるまでの距離
スライドの右側メニューに「録画」が追加され、そこから録画を開始できるようになりました。録画したものはそのまま一覧に並び、タイトルをクリックするとプレイヤーで再生され、右上から共有範囲を選べます。特定のユーザー、組織内、リンクを知っている全員のいずれかを選べば、その場で渡せるリンクになります。
出来上がった録画は、ドライブの他のファイルと同じように扱えます。つまり、共有・移動・権限変更・削除の作法はこれまで知っているものがそのまま通用します。
展開の時期は迅速リリースのドメインで2026年8月20日から最大15日、計画的リリースのドメインでは9月7日から最大3日です。Google Workspace のユーザーだけでなく、Workspace Individual や個人の Google アカウントでも使えます。
重要なのは、新しいツールを覚える必要がほぼないことです。Vids を単体で開いて動画を組み立てる作業は、社内マニュアルのように作り込む前提なら価値がありますが(Vids で社内マニュアルを動画にするで扱いました)、「今週の説明を1回ぶん残す」用途にはやや重い。スライドから直接というのは、この重さを避けるための導線です。
録画に回してよい説明、対面に残す説明
すべての説明を録画にすると、たいてい失敗します。線引きの基準は「説明の途中で相手の反応によって内容が変わるかどうか」です。
| 説明の性質 | 扱い |
|---|---|
| 手順・仕様・前提知識の共有 | 録画にする。何度でも見返せることに価値がある |
| 相手の状況を聞きながら中身を変える説明 | 対面に残す。録画すると一方通行になる |
| 判断を求める提案 | 前段だけ録画し、対面は質疑と決定に使う |
3行目が実務ではいちばん効きます。提案の場で最初の20分を背景説明に使い、残り10分で議論して時間切れ、という会議は珍しくありません。背景説明を事前に録画で渡しておけば、会議の頭から議論に入れます。
逆に、録画に向かないものを無理に録ると「見られない動画」が増えます。誰も見ていない動画がドライブに溜まっていく状態は、更新されない手順書と同じで、あとから棚卸しが必要になります。マニュアル類が古くなる問題への向き合い方は手順書を再生成できる形で納めるに書きました。

出来た動画は「ドライブのファイル」である
便利さの裏側で、管理上の論点が1つ増えます。録画には、スライドに書いていないことが入ります。
口頭の説明には、資料に載せていない社内の事情、進行中の案件名、担当者の名前、まだ公開していない価格の話が混ざります。スライドそのものは社外に出しても問題なくても、その説明を録画したものは外に出せない、という状況が普通に起きます。
そのため、次の2つは先に決めておいてください。
- 既定の共有範囲を「組織内」にする。 録画のたびに共有設定を考えるのは続きません。既定を絞っておき、外に出すものだけ個別に緩めるほうが事故が減ります。外部共有の状態を後から棚卸しする方法はドライブの共有リンクを棚卸しして止めるにまとめています。
- 置き場所を最初から共有ドライブにする。 個人のマイドライブに置いたままだと、担当者の退職時にまとめて見られなくなります。説明を残す目的で作ったものが、人が抜けた瞬間に消えるのでは本末転倒です。
次にやること
まず、今月、同じ説明を3回以上した資料を1つ選んでください。 そのうえで、次に同じ説明を求められたときに、口頭ではなく録画を1本作って渡してみます。所要時間は、説明そのものの長さとほぼ同じです。
そして、録画を置く共有ドライブのフォルダを1つ決めてください。 場所が決まっていないと、便利さに気づいた人から順に自分のマイドライブに録り始め、半年後に「あの説明の動画、どこですか」が始まります。
Google Workspace の社内ナレッジの整理、共有ドライブの構成と権限設計、動画・手順書の運用ルールづくりについては、グリームハブの IT・Google Workspace 無料相談で承っています。既存の資料の量と体制によって進め方が変わるため、個別にご相談ください。お問い合わせからどうぞ。




