MCPサーバーは納品された。でも、誰も使っていない | GH Media
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MCPサーバーは納品された。でも、誰も使っていない

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MCPサーバーは納品された。でも、誰も使っていない

社内の在庫システムを AI から扱えるようにしたい、という依頼で MCP サーバーを作った。ツールは12個、認証も通り、仕様書も揃っている。検収も問題なく終わりました。

3ヶ月後、使われていません。

現場に聞くと、答えはだいたい同じです。「AI に頼んでも、思っていたのと違う答えが返ってくる」「結局、いつもの画面で自分で調べたほうが早い」。

ツールを揃えても、手順は渡っていない

原因は、納品物の内容にあります。MCP サーバーが提供しているのはデータ・認証・操作です。「在庫を検索する」「入庫を登録する」「拠点一覧を取得する」といった個々の能力が並んでいます。

一方で、現場が AI にやってほしいのはこういう依頼です。

「A社向けの今月の欠品リスク、拠点別に出して」

この依頼を処理するには、拠点一覧を取り、各拠点の在庫を引き、A社の受注予定と突き合わせ、閾値を下回るものを抽出する、という手順が要ります。その手順はどこにも書かれていません。 ツールの説明文には「在庫を検索します」としか書いていない。AI は12個の道具を渡されただけで、業務の段取りを知らない状態です。

MCP そのものの設計や運用についてはMCP のステートレス仕様と社内連携の保守書き込み操作の境界と実行者の記録で扱っていますが、今回の詰まり方はもう一段手前、「何を納品物と呼ぶか」の問題です。

2026年8月に出た2つの動き

この空白を埋める動きが、8月に相次いで出ています。

1つ目が Agent Plugins 1.0.0 です。 2026年8月6日、Amazon、Cursor を開発する Anysphere、Microsoft、OpenAI、Vercel の5社が共同で公開した仕様で、エージェント向けのスキルと MCP サーバーを、ひとつの配布可能なフォルダにまとめるためのものです。マニフェストにペアリングを記述するため、クライアント側が「このサーバーには、この使い方が付いている」を自動的に認識できます。これまで README に文章で書いていた対応関係が、機械が読める形になったということです。

2つ目が Skills Over MCP への対応です。 2026年8月26日、OpenAI の Max Stoiber 氏が、公開プラグインでこの方式に早期対応したと投稿しました。gihyo.jp の報道によれば、プラグインの提出時に MCP サーバー側からスキルを取り込む形になります。サーバーが自分の使い方を配る、という流れです。

ここでいう「スキル」は、機能の追加ではありません。繰り返し発生する作業を、どう進めるかを書いた指示・例・テンプレート・参照資料の束です。MCP サーバーが道具を出し、スキルが段取りを出す。役割がはっきり分かれています。

MCPサーバーがツールを提供し、スキルが業務手順を提供する役割分担を示した図

発注時に、納品物の欄を1行増やす

社内システムを AI から使えるようにする案件で、これまでの納品物はこうでした。

  • MCP サーバー本体(ソースと実行環境)
  • ツール定義と仕様書
  • 認証・権限の設計書

ここに1行足します。「主要な業務依頼に対する手順定義(スキル)を3〜5本」です。

数を絞るのは意図的です。全業務を網羅しようとすると作業量が跳ね上がり、しかもどれも使われません。現場が実際に週1回以上頼む依頼を3〜5本選び、それだけを型にする。1本目が使われたかを確認してから増やすほうが、確実に定着します。

書き方の考え方自体は、AI に手順を渡すためのファイル設計として以前から議論されてきました。AGENTS.md / SKILL.md / DESIGN.md の使い分けで整理した内容が、そのまま下敷きになります。

検収で「使えるか」を確認する方法

スキルが納品物に入ると、検収のやり方も変わります。ツールが動くかどうかは自動テストで見られますが、手順が妥当かどうかは業務を知る人しか判断できません。

現実的な検収の手順は次の3つです。

  1. 現場の担当者に、普段の言い回しで10件依頼してもらう。 発注側が用意した綺麗な質問文ではなく、実際に使う雑な聞き方で試します
  2. 返ってきた答えを、業務担当が正誤判定する。 「合っている」「間違っている」「答えるべきでない依頼」の3分類で十分です
  3. 修正のたびに同じ10件を流す。 直したつもりが別の依頼を壊すことがあるため、比較できる状態を残します

この「同じセットを流し続ける」考え方は、AI 機能の検収全般に共通します。詳しくは「AIがたまに嘘をつく」と言われて、直ったかを誰も確認できないにまとめました。

なお、標準が出たばかりであることは踏まえておいてください。 Agent Plugins は 1.0.0 が公開された段階で、対応するクライアントもこれから増える局面です。今日の実装をそのまま2年使う前提では組まず、スキルの中身(業務手順の記述)と、配布形式(マニフェスト)を分けて持つ構成にしておくと、形式が変わったときの影響を小さくできます。

次にやること

まず、社内で AI から使えるようにしたシステムがあるなら、直近1ヶ月の利用ログを見てください。 呼び出し回数がゼロに近ければ、足りないのは機能ではなく手順です。

そのうえで、現場が週1回以上その業務で発生させている依頼を3つ書き出してください。 「A社向けの欠品リスクを拠点別に」のような、実際の言い回しのまま書くのが重要です。この3つが、最初に型にすべきものです。既存の MCP サーバーを作り直す必要はありません。手順を足すだけで動き出す例は少なくありません。

社内システムの AI 連携設計、MCP サーバーと業務手順の設計、導入後に使われる状態までの伴走については、グリームハブの開発・AI・自動化のご相談で承っています。既存システムの構成によって取れる手が変わるため、お問い合わせからご相談ください。

Sources

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記事を書いた人

鈴木 翔

鈴木 翔

技術の可能性に魅了され、学生時代からプログラミングとデジタルアートの分野に深い関心を持つ

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