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切り抜き作業が消える画像生成 — 納品物に使えるかは別の話

目次 · 5項目

バナーを1本作るのに、素材の切り抜きで半日かかる。人物や商品の輪郭を抜いて、影を作り直して、背景に馴染ませる。デザイン作業というより、手作業に近い時間です。

2026年9月20日、Alibaba の Qwen チームが画像生成・編集モデル「Qwen-Image-2.1」をオープンウェイトで公開しました。特徴のひとつが、色の情報に加えて透明度を持つRGBA画像を、テキストの指示から直接出せることです。切り抜きの工程そのものが要らなくなる可能性があります。ただし、制作会社が納品物に使えるかどうかは、性能より先にライセンスで決まります。

できることは「透過」だけではない

配布元の説明によると、7Bパラメータの生成器にテキストからの生成と画像編集が統合されています。背景を透明に保ったまま被写体の表情を変える、画像内の文字を書き換える、最大10枚の参照画像を1つの構成にまとめる、といった編集が挙げられています。

制作の現場で効くのは、この「透過を保ったまま編集できる」部分です。背景ありで生成してから抜く場合、髪の毛や半透明の部分で粗が出やすくなります。最初から透明度の情報を持っていれば、その粗を直す工程を減らせる可能性があります。

先に見るのはライセンス区分

このモデルは Qwen Research License Agreement(2026年9月20日付)のもとで公開されています。ライセンスの原文は、利用を非商用、つまり研究または評価の目的に限って許諾しており、商用目的で使うには配布元から別の商用ライセンスを得る必要があると定めています。申請の窓口も原文に書かれています。つまり、社内での評価と、クライアントのサイトに載せる画像づくりは、同じ操作でも扱いが変わります。

「オープンウェイトで公開された」と「自由に商用利用できる」は別です。重みが配布されていて手元で動かせるモデルでも、ライセンスの条件は配布元が決めます。受託制作では、ここを確認せずに素材を作ると、納品後に差し替えが必要になったときの費用を誰が持つかという話になります。

確認する順番は次の3つです。

  1. モデルのライセンス区分 — 商用可か、研究・評価の目的に限定されているか。限定なら申請の窓口と条件
  2. 自社の生成物の扱い — 誰がどの環境で生成したか記録が残るか。外注先の作業も含むか
  3. クライアントとの契約条件 — 制作物へのAI利用を認めているか。開示義務があるか

3つ目を見落とすと、モデル側が商用可でも問題が残ります。発注者側がAIの利用範囲を契約で定める流れについては制作物のAI利用条件と検収で扱っています。

手元で動かす前提も確認する

もうひとつ見落とされやすいのが、動かす環境です。7Bは画像を生成する部分のパラメータ数で、指示文の読み取りには別にQwen3-VL 8Bを使う構成です。扱う重みのファイルは小さくありません。画像生成ツールのComfyUI向けに配布されている重みでは、軽量化した形式(INT8)でも、生成部分が7.26GB、指示文を読み取る部分が9.35GBあります。

制作用のノートPCでそのまま動くとは限らないため、共用の作業機に置くのか、各自の端末に配るのかを先に決めておきます。ここを詰めずに「使えるらしい」とだけ共有すると、各自がばらばらの環境で試し、出てきた素材の出どころが分からなくなります。

内製するか、外に出すかの判断材料が1つ増えた

ライセンスの条件が整ったうえで透過素材を自前で出せるようになると、簡単なバナー差し替えのために都度見積もりを取る必要は薄れます。一方で、ブランドの一貫性が要る本番の素材は、生成物をそのまま使うより、人が構図と色を決めたほうが手戻りを抑えやすいでしょう。

この線引きは、モデルが変わっても大きくは動きません。判断の軸は生成AIでの画像制作を内製するか外注するかで整理しています。

試すなら、本番と切り離した場所で

評価の手順としては、実際の案件の素材ではなく、社内用のダミー案件を1本立てて試すのが安全です。ライセンスが研究・評価の目的に限られている間は、成果物を本番に流用しない前提を作業環境ごと分けておきます。

そのうえで見るのは、生成の精度よりも後工程です。出てきたPNGがそのまま制作ツールに乗るか、半透明の縁が意図どおりに残るか、同じ指示で近い絵がもう一度出せるか。この3つが通らなければ、切り抜きの時間は消えても、修正の時間に置き換わるだけです。

2026年9月24日に、配布元のGitHubリポジトリにあるライセンス原文(Qwen Research License Agreement)と、Qwenの公式ブログ・リポジトリの説明を確認しました。重みのファイルサイズはComfyUI向けの配布ページの表示によります。モデルの実行、生成結果の品質確認、商用ライセンスの申請は行っていません。本記事はライセンスの解釈を示すものではなく、条件は配布元の原文が優先されます。商用利用の判断は、必ず最新のライセンス原文で確認してください。

Web制作での素材づくりの体制や、生成AIの利用ルールづくりの相談は、グリームハブへご相談ください。

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鈴木 翔

技術の可能性に魅了され、学生時代からプログラミングとデジタルアートの分野に深い関心を持つ

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