自社のアプリでサブスクリプション(自動更新の定期課金)を売っている会社にとって、2026年10月22日のAppleの告知は、何もしなくても販売の条件が変わりうる内容でした。企業や学校が、アプリのサブスクリプションを人数分まとめて買えるようになり、その設定が多くのサブスクリプションで既定でオンになっているためです。
Appleの開発者向けの告知は、次のように書いています。
Multiseat purchasing for subscriptions is enabled by default in App Store Connect, unless you’ve previously adjusted this setting. This makes your subscription available for purchase through Apple Business, Apple School Manager, and the App Store.
Apple Businessは法人向けのAppleのサービスで、Appleのサポートページによると、以前のApple Business Managerなどの機能をまとめたものです。
この記事では、Appleの告知とApp Store Connectのヘルプ、App Store Connect APIのドキュメントをもとに、サブスクリプションを売っているアプリの担当者が確かめることを整理します。
何ができるようになったか
告知によると、Apple BusinessやApple School Managerを使っている組織は、必要な席の数を1回のアプリ内課金でまとめて買い、すでに使っている端末の管理のツールで席を割り当て・管理できます。席の数はいつでも増減できます。
法人向けの販売の窓口が1つ増える一方で、アプリの側では次の点を決めておく必要があります。
- 自社のサブスクリプションを、組織にまとめて売ってよいか(利用規約や料金の設計と合っているか)
- 売る場合、App Store、Apple Business、Apple School Managerのどこで売るか
- 売らない場合、設定をオフにするか
既定の例外とApp Storeでの開始時期
App Store Connectのヘルプは、告知にない例外を挙げています。
- 既定でオフ(opted out)になるもの:2026年9月14日より前に作られたサブスクリプションのうち、StoreKit 2を使っていないものと、ファミリー共有がオンのもの。複数席を売りたい場合は、いつでもオンにできる
- カスタムアプリ(特定の組織向けに配るアプリ)のサブスクリプション:購入のオプションを管理できない。自動でApple BusinessとApple School Managerで買えるようになり、複数席の購入をオフにすることはできない
- App Storeでの複数席の購入:ヘルプは、App Storeの顧客が複数の席を買えるようになるのは今年中(later this year)としている。告知も、App Storeでのグループでの購入は今冬からとしている
自社のサブスクリプションがどれに当たるかは、次の節の設定の画面か、後で紹介するAPIで実際の値を確かめてください。
設定の場所と選べる項目
App Store Connectのヘルプによると、設定はサブスクリプションの「Purchase Options(購入のオプション)」にあります。アプリを選び、Subscriptionsから対象のサブスクリプションを開いて、Purchase OptionsのEditを押します。設定できるのは、アカウント保有者(Account Holder)、管理者(Admin)、アプリの管理者(App Manager)の役割です。
1つめの質問は「Can a customer purchase multiple seats for this subscription?」(複数の席を買えるようにするか)です。
- Yes, allow multiseat purchases:複数の席を買える。Apple BusinessとApple School Managerで売るには必須
- No, don’t allow multiseat purchases:1つの席だけ買える
2つめの質問は「Where can a customer purchase this subscription?」(どこで買えるようにするか)で、App Store、Apple Business、Apple School Managerから選びます。

オフにするときの影響
すでに承認されたサブスクリプションの設定を変えるときは、既存の契約者への影響に注意が必要です。ヘルプの記載をまとめると次のとおりです。
- 複数席の購入をオフにする:新しい顧客は複数の席を買えなくなり、そのサブスクリプションはApple BusinessとApple School Managerから外れる(両者は複数席の購入にしか対応していないため)。既存の契約は、まとめて買った人が解約するまで更新が続く。席を増やすことはできず、減らすことはできる
- Apple Business・Apple School Managerでの販売をやめる:承認後に変更できるが、既存の契約者は自動では更新されず、次の更新の終わりで解約になる。この変更はアカウント保有者(Account Holder)だけができる
- App Storeでの販売:承認後は、App Storeでの販売をやめることはできない
ヘルプは保存の前に、変更が既存の契約者の更新や席の追加にどう影響するかを考えるよう求めています。販売の窓口を絞る場合は、オフにする日と既存の契約者への案内をあわせて決めておくのが安全です。
ファミリー共有との関係は資料で記載が違う
ファミリー共有(家族でアプリ内課金を分け合う機能)を使っているサブスクリプションでは、資料の間で書き方が違う点があります。「既定の例外とApp Storeでの開始時期」の節のとおり、ヘルプでも、9月14日より前に作られファミリー共有がオンのサブスクリプションは既定でオフです。違うのは、両方をオンにしたときの扱いです。
- App Store Connectのヘルプ(購入のオプションとファミリー共有の2つのページ):複数席の購入とファミリー共有の両方がオンのときは、まとめて買った人だけが家族と共有でき、ほかの席は個人での利用だけになる。ファミリー共有がオンのサブスクリプションで複数席の購入をオンにするときは、そのことの確認を求められる
- App Store Connect APIのドキュメント:サブスクリプションでファミリー共有をオンにすると、
multiSeatStatusが自動でDISABLEDになる。複数席の購入をもう一度オンにした場合、ファミリー共有は1席だけ買ったときに適用される
2026年10月27日時点で、どちらの動きになるのかは資料からは判断できませんでした。ファミリー共有を使っているサブスクリプションでは、App Store Connectで実際の設定の表示を確かめるようにしてください。なお、ヘルプは、ファミリー共有は一度オンにするとオフにできないとしています。
APIで設定を確かめる
サブスクリプションが多い場合は、App Store Connect APIで設定を読むこともできます。ドキュメントによると、GET /v1/subscriptions/{id} の応答の multiSeatStatus と marketSettings で現在の設定が分かります。
{
"data" : {
"type" : "subscriptions",
"id" : "6446671421",
"attributes" : {
"multiSeatStatus" : "ENABLED",
"marketSettings" : [ "APP_STORE", "APPLE_BUSINESS" ]
}
}
}
上はドキュメントに載っている応答の例です(IDは例の値)。ドキュメントに書かれた各項目の意味は次のとおりです。
multiSeatStatus:ENABLED(複数席を買える。すべての自動更新サブスクリプションの既定)かDISABLED(1席だけ)。ただしヘルプは既定でオフになる例外を挙げているため、既定の値を当てにせず、この項目で実際の値を確かめるのが確実ですmarketSettings:複数席を売る窓口。APP_STORE、APPLE_BUSINESS、APPLE_SCHOOLの配列。multiSeatStatusがDISABLEDのときは効果がない
設定の変更は PATCH /v1/subscriptions/{id} で行い、変更できるのはアカウント保有者(ACCOUNT_HOLDER)、管理者(ADMIN)、アプリの管理者(APP_MANAGER)の役割です。マーケティング(MARKETING)の役割のAPIキーは、読み取りだけができます。編集部では、実際のアカウントでAPIを呼んでいません。
まとめて買われたときのアプリの側の確認
ここからは編集部の提案です。複数席の購入を受け付ける場合は、アプリやサービスの側でも次の点を確かめておくと、導入した組織からの問い合わせを減らせます。
- 1人で使う前提の利用規約や料金表になっていないか
- 組織で割り当てられた席で使う人が、アプリのアカウントやログインでつまずかないか
- 組織の端末の管理のツールで配る場合の手順を、導入する組織向けに案内できるか
席の割り当てがアプリのアカウントにどう伝わるかなど、実装の詳細は今回の資料では確認していません。告知が紹介しているWWDC26のセッション「Offer subscriptions to groups and organizations」で、実装の詳細を確認してから進めてください。
また告知は、グループでの購入(個人が複数の席を買って他の人を招待する仕組み)も予告しています。2026年11月から開発者のテスト用のアカウント(Sandbox)で設定と試験ができるようになり、今冬にApp Storeで使えるようになる予定です。
会社のiPhoneを端末の管理のツールでまとめて管理している場合の考え方は、Google エンドポイント管理 iOS 新設定でも触れています。アプリの保守の体制づくりは業務用スマホアプリを外注する前にで解説しています。
確認した範囲
2026年10月26日に、Apple Developerのニュース「Offer your subscriptions to businesses and schools」(2026年10月22日)、App Store Connectのヘルプ「Manage purchase options for an auto-renewable subscription」、App Store Connect APIのドキュメント「Configuring multi-seat subscriptions for organizations」を確認し、10月27日に同じ資料と、ヘルプ「Turn on Family Sharing for In-App Purchases」、Apple Business Managerのユーザーガイドを確かめ直しました(資料調査)。App Store Connectでの設定の画面、APIの呼び出し、Apple Businessでの購入、日本での提供状況、WWDC26のセッションでの実装の詳細は確認していません。
サブスクリプションのアプリの改修や、法人向けの販売に合わせた仕組みづくりは、開発・AI・自動化のご相談からお問い合わせください。
参考資料
- Offer your subscriptions to businesses and schools(Apple Developer、2026-10-22)
- Manage purchase options for an auto-renewable subscription(App Store Connect Help)
- Configuring multi-seat subscriptions for organizations(App Store Connect API)
- Turn on Family Sharing for In-App Purchases(App Store Connect Help)









