
問い合わせの件数だけを見て「サイトは機能している」と判断していた会社が、中身を1件ずつ開いて青ざめる、という場面を何度か見ています。届いているのは商談の相談ではなく、SEO の売り込み、システム開発の営業、記事広告の提案です。
これは他人事ではありません。自社メディアの問い合わせを90日分まとめて分類したとき、営業目的のメールがほぼ全件を占めていました。 別の月に問い合わせ完了イベント33件の流入元を追ったときも、営業代行サービスのドメインからの流入が2件、制作会社のドメインから2件、検索経由が1件で、残りはリファラのない直接流入でした。フォームは動いています。動いた結果として、営業側のリストの入口になっているだけです。
厄介なのは、この状態が問い合わせ件数という指標を壊すことです。件数が増えれば増えるほど、サイトの成果が見えなくなります。
送っているのは機械か、人か
対策の話が噛み合わなくなる原因は、送信元を1種類だと思っていることにあります。実際には性質の違う2つが混ざっています。
機械が送るものは、フォームの構造を機械的に読み取って自動送信されます。日本語が崩れていたり、本文に URL が大量に並んでいたり、同じ内容が短時間に繰り返し届いたりします。
人が送るものは、フォーム営業と呼ばれる手法です。営業代行が実際にフォームを開き、内容を読み、送信します。あるいは同種のサービスが半自動で送ります。文面は自然で、宛名も入っていて、自動化の検知にはまず引っかかりません。
| 送信元 | 見分け方 | 効く手当て |
|---|---|---|
| 自動送信のボット | 短時間の連投、本文のURL過多、日本語の崩れ | CAPTCHA、送信レート制限、CDN/WAF での遮断 |
| フォーム営業(人・半自動) | 自然な文面、宛名あり、送信元は正規のブラウザ | 検知では止まらない。窓口と受信側の設計で分ける |
多くの会社が最初に入れるのは CAPTCHA です。これは1行目には効きます。2行目にはほぼ効きません。人間が実際に送っているからです。ここを取り違えたまま検知を強めていくと、止まるのは営業ではなく本物の見込み客のほうになります。実際、ボット判定を強めた結果として本物の訪問者の離脱が増えるのは、よくある失敗です。

フォーム営業は違法なのか、という質問について
相談を受けると必ず出る論点なので、現在の一般的な整理を書いておきます。
特定電子メール法は、広告や宣伝を目的とする電子メールについて、あらかじめ同意した相手にのみ送信できるオプトイン方式を原則としています。例外のひとつに、インターネット上で自らメールアドレスを公開している事業者への送信があります。
問い合わせフォームは、この例外の要件を満たしません。メールアドレスを公開している状態ではないためです。この点から「フォーム営業は例外の対象外であり、違法性が高い」とする見解があります。一方で、フォームからの送信はそもそも電子メールの送信に当たらないとして適用外だとする見解もあり、実務上の扱いは分かれています。
つまり、法律を根拠に止まることは当面期待できません。送信側は自分たちの解釈で送り続けます。サイト側でできるのは、届いたあとの扱いを設計することです。
商談だけを残すための手当て
順番に効きます。上から着手してください。
1. 用件の選択を必須にする。 自由記述だけのフォームは、何を書いても送れます。「サービスに関するご相談/採用について/取材・掲載のご依頼/その他」のような選択肢を必須にすると、営業側は「その他」を選ぶしかなくなります。受信側で仕分ける材料が1つ増えるだけでも、朝の確認時間が変わります。
2. 営業目的の送信をお断りする旨をフォーム上に書く。 抑止効果は限定的ですが、書いてあること自体が後の対応の根拠になります。表示は送信ボタンの近くに置き、同意を取ったように見せかける作りにしないことが前提です。
3. 受信を1つのメールボックスに集約しない。 用件の選択結果に応じて宛先や件名の接頭辞を変えておくと、受信側でのフィルタと隔離の設定が機能します。フォーム側で分けずに受信側だけで頑張ると、判定の材料が本文しかなくなります。
4. 自動送信への手当ては、そのあとで。 CAPTCHA や CDN 側での遮断は 1行目に効く対策です。効果はありますが、入れても営業メールは減りません。期待値をそろえてから入れてください。
なお、入力項目を増やすほど本物の問い合わせも減ります。項目の追加は入力の負担と到達率のトレードオフの中で決める話で、営業対策のために10項目を必須にするのは本末転倒です。用件の選択1つで足ります。
指標を「件数」から外す
手当てより先に効くのが、こちらです。
問い合わせ件数を成果指標に置いている限り、営業メールが増えるほど数字は良く見えます。見るべきは、そのうち商談として成立した数です。フォームの用件選択を入れておくと、この分類が手作業でなくなります。
月次の報告で「問い合わせ50件」と出ているサイトの実態が、商談2件と営業48件だったとき、打ち手はまったく変わります。前者を増やす施策と、後者を減らす施策は別物です。件数のままにしておくと、この2つが混ざって、どちらにも効かない改修に予算が向かいます。
次にやること
直近1ヶ月に届いた問い合わせを開いて、商談につながり得るものとそうでないものに分けてください。割合が出た時点で、次に何をすべきかはほぼ決まります。
営業側が9割を超えているなら、着手するのは用件の選択項目の追加と受信側の振り分けです。CAPTCHA の強化ではありません。
問い合わせフォームの作り直し、用件別の導線設計、受け取ったあとの振り分けまで含めたサイトの改修については、グリームハブのHP制作・リニューアル相談で承っています。現在のフォームの構成と受信の運用によって進め方が変わるため、お問い合わせからご相談ください。




