「うちは介護サービス情報公表システムに載っているから、ホームページは要らないのでは」。自社サイトの要否を考えるとき、こう感じる場面があります。公表制度は介護保険法に基づく義務で、原則すべての事業所が情報を報告・公表しています。探す人は、そこを見れば事業所を見つけられる。 そのとおりです。
自社サイトは、公表制度の情報を置き換えるものではありません。採用を検討する人に職場の様子を伝える、ケアマネジャーに現在の受け入れ条件を案内する、といった目的で補完できます。事業所名で検索した人が必要な情報と連絡先を見つけられることを、制作の目標に置きます。
この記事は、介護事業所がサイトを作る/作り直すときに、何にお金をかけると効くのかを発注する側の判断材料として整理したものです。
公表システムでは伝わらないものがある
公表制度は利用者による選択を支援するための仕組みで、サービス内容や運営状況が決められた形式で並びます。条件で絞り込むにはよくできています。
ただし、そこで分かるのは条件が合うかどうかまでです。事業所が並んだあと、利用者の家族やケアマネジャーが次に知りたいのは別のことです。
- どんな人が働いているのか。定着しているのか
- 実際の一日がどう流れるのか。空間はどんな雰囲気か
- 困ったときに誰に、どう連絡が付くのか
これらの情報は、公表情報に加えて写真や職員の言葉で補足すると伝えやすくなります。だから検索して事業所名のサイトを見にきます。公表システムは「候補に入るための場所」、自社サイトは「選ばれるための場所」と役割が分かれている、と考えると設計しやすくなります。
見にくる人は3者いて、見たいものが違う
介護事業所のサイトが中途半端になりやすいのは、読み手が1種類ではないのに1本の導線しか作らないからです。実際には3者が別の目的で来ます。
| 誰が来るか | 何を確かめに来るか | 用意すべきもの |
|---|---|---|
| 利用者本人・家族 | 安心して任せられるか、費用はいくらか | 職員の顔と体制、一日の流れ、料金の考え方、相談の連絡先 |
| ケアマネジャー | 紹介先として条件と受け入れ体制が合うか | 対応可能な状態像、受け入れ可否と空き状況、連絡手段と担当者 |
| 求職者 | ここで働き続けられそうか | 職員の声、シフトの実態、資格取得支援、応募のハードルの低さ |
3者を1ページに詰め込むと、どれにも刺さらないページになります。トップから3つの入口を分けて、それぞれのページで完結させるほうが結果が出ます。
なかでも取りこぼしが大きいのがケアマネジャーです。居宅介護支援事業所のケアマネは、利用者に合う事業所を探すときに設備やスタッフ構成、ケアの内容を具体的に確認します。ここで情報が薄いと、確認の電話をかける手間を惜しんで別の事業所が選ばれます。「受け入れ可能な状態像」と「担当者の直通の連絡先」が書いてあるだけで、紹介の入り口が開きます。

採用ページで効くのは「きれいな写真」ではない
複数の職場を比較している応募者に対しては、応募者は複数の事業所を並べて比べています。そのときに差が付くのは、施設の外観写真でも理念のスローガンでもありません。働き方の具体です。
応募を迷っている人が本当に知りたいのは、だいたい次のことです。
- シフトの実際。 夜勤は月何回か、希望休は通るのか、残業は月どれくらいか
- 人員体制。 1フロア何人で回しているのか、急な欠勤のときどうなるのか
- 入職後の流れ。 未経験・無資格から入った人が、何をどの順で覚えたのか
- 資格取得の支援。 費用の負担はあるか、勤務時間内に受けられるか
3番は特に効きます。初めて働く職場では、「入ったあと放り出されないか」を確かめたがります。先輩職員が入職直後の数か月をどう過ごしたかを本人の言葉で載せると、ここに答えたことになります。
逆に、載せても効かないものもあります。代表者の長い挨拶文、他社と区別のつかない理念、加工しすぎた写真。どれも「この事業所ならでは」の情報を含んでいないため、読んだ人の判断材料になりません。
採用ページ全般の作り方は採用サイト制作のポイントで整理しているので、構成の型はそちらも参考になります。
表示には規制がかかる領域がある
介護分野は、書き方に注意が要る領域です。ここを知らずに制作会社へ丸投げすると、公開後に修正が発生します。
- 有料老人ホームは、景品表示法に基づく公正取引委員会の告示(平成16年4月2日告示第3号)で「不当な表示」が定められています。土地建物の権利関係、施設設備、居室の利用、介護サービス、職員体制、管理費などについて、制約があるのに明りょうに書かれていない表示が規制の対象です 施設種別によって適用される法令や広告の扱いが異なります。有料老人ホームのルールを、介護老人保健施設やサービス付き高齢者向け住宅へそのまま当てはめず、施設種別・掲載媒体・表示内容ごとに所管自治体の最新案内を確認してください。
実務でつまずきやすいのは、提供主体がどこかを曖昧にした書き方です。施設自身が提供するわけではない介護サービスを、あたかも施設のサービスであるかのように並べる。保険給付の対象外のサービスを、内容と費用を明示せずに載せる。どちらも指摘を受ける形です。
同じ構造の注意点は医療分野にもあります。クリニック・医院のサイト制作でも触れているとおり、規制のある業種では「何を書かないか」の判断が制作の一部になります。制作会社を選ぶときは、この領域の経験があるかを聞いておくと安全です。
発注する前に決めておくこと
見積りを取る前に、事業所側で決めておくと話が早いのは次の3点です。
1. サイトの主目的をひとつに決める。 採用なのか、ケアマネからの紹介なのか、利用者家族への説明なのか。3つとも載せるとしても、トップページで一番目立つ場所を渡す相手は1つに絞ります。ここが決まっていないと、制作側も判断のしようがありません。
2. 写真と職員の協力を先に確保する。 介護事業所のサイトで一番効くのは職員本人の言葉と表情ですが、これは制作会社が用意できません。誰に登場してもらうか、撮影日をいつ取るかを先に決めておくと、素材待ちによる遅れを減らせます。
3. 公開後に誰が更新するかを決める。 空き状況、求人の募集要項、行事の様子。このあたりが1年古いままのサイトは、見た人に「ここは動いていない」という印象を与えます。更新する人と頻度を決めてから、その人が扱える仕組みを選びます。
制作費の相場観そのものはホームページ制作の費用相場ガイドに整理しています。介護事業所の場合は、求人ページの本数と撮影の有無で金額が動くため、自事業所に必要な範囲を決めてから見積りを取るほうが比較しやすくなります。制作会社の選び方はWeb制作会社の選び方も合わせてご覧ください。
次にやること
まず、自事業所の名前で検索してみてください。公表システムのページと求人媒体の掲載が並び、自社サイトが出てこない、あるいは出てきても数年前のままなら、応募を迷った人はそこで判断しています。
そのうえで、上の3者のうちどれを一番取りたいかを決めてください。採用なら、次にやることは制作会社探しではなく、登場してもらう職員を決めることです。ここが動き出せば、サイトの中身は自然に埋まります。
グリームハブでは、介護・福祉事業所のサイト新規制作およびリニューアルのご相談を承っています。「求人媒体に出しているのに応募が来ない」「ケアマネからの紹介を増やしたい」といったご相談に、読み手ごとの導線設計から表示上の注意点まで踏まえてご提案します。費用は事業所の規模やご希望の機能によって変わるため、まずは個別にお見積りいたします。お問い合わせからお気軽にご連絡ください。









