会社のファイルが個人任せになっていませんか — 共有ドライブへ移す前の判断 | GH Media
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会社のファイルが個人任せになっていませんか — 共有ドライブへ移す前の判断

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会社のファイルが個人任せになっていませんか — 共有ドライブへ移す前の判断

「先月やめた担当者が作っていた顧客の見積書一式が、どこにも見当たらない。共有はされていたはずなのに、本人のアカウントを止めた途端に開けなくなった」——従業員30名ほどの会社で、こんな相談を受けました。原因はシンプルで、そのファイル群が退職者のマイドライブに置かれ、他のメンバーには「共有」されていただけだったからです。共有されたファイルの所有者はあくまで作った本人。本人のアカウントを削除・停止すれば、共有していたファイルもろとも道連れになります。

会社の資産であるはずのファイルが、実際には社員個人の持ち物として散らばっている。これは事故が起きて初めて気づく、静かなリスクです。Google Workspace には、この構造そのものを解決する共有ドライブという仕組みがあります。ただ、何も考えずに全ファイルを放り込むと、今度は権限がぐちゃぐちゃになって別の混乱を生みます。まずは「所有権が誰にあるのか」という一点から、なぜ移すのか・どう移すのかを見ていきましょう。

マイドライブと共有ドライブの決定的な違い

両者の違いは機能の多寡ではなく、ファイルを誰が所有するかにあります。マイドライブに置いたファイルの所有者は、それを作った個人です。他のメンバーは「共有される側」でしかありません。一方、共有ドライブに置いたファイルの所有者は、個人ではなく組織(チーム)になります。

マイドライブ共有ドライブ
ファイルの所有者作成した個人組織(チーム)
作成者が退職・削除されたら共有していたファイルも失われる恐れファイルはそのまま残る
アクセス権の考え方ファイルごとに個人が共有設定ドライブ単位でメンバーと権限を統一管理

この一点が、退職・異動のたびに起きるファイル消失や引き継ぎ漏れの根っこです。共有ドライブなら、メンバーが抜けてアカウントが消えても、そこに置いたファイルは組織のものとして残り続けます。退職処理そのものの手順は 退職者アカウントの正しい閉じ方 で扱っていますが、そもそも資産が共有ドライブに載っていれば、退職処理でファイルが巻き添えになる不安は大きく減ります。

なぜ「共有すればいい」では足りないのか

「ちゃんとメンバーに共有しているから大丈夫」という声をよく聞きます。ところが共有は、あくまで所有者が他人に閲覧・編集の権利を貸している状態にすぎません。貸し主(=作成者本人)がいなくなれば、貸されていた権利も宙に浮きます。さらに、誰がどのファイルをどこまで共有しているかは本人しか把握しておらず、管理者からは全体像が見えない。結果として「重要な台帳が特定の一人のドライブにしかなく、その人が休むと誰も触れない」といった属人化が、そこかしこで起きます。

もうひとつの落とし穴が、退職時の一括処理です。アカウントを停止・削除するとき、その人が所有していたファイルの扱いを間違えると、業務で使っていた資料ごと消えることがあります。管理者がファイルの所有権を別の人へ移管する手順もありますが、対象が多いと漏れが出やすく、そもそも「何を持っていたか」の棚卸しから始める羽目になります。最初から共有ドライブに置いておけば、この作業自体が不要になります。

移行で事故る急所 — 権限の上書き

では全部を共有ドライブに移せばいいのかというと、ここに最大の落とし穴があります。マイドライブでファイルごとに細かく設定していた共有権限は、共有ドライブに移すとドライブ単位の権限ルールに置き換わります。つまり「このファイルだけは経理部にしか見せていなかった」という個別設定が、移した先のドライブのメンバー全員に見える状態へと変わってしまうことがあるのです。

だからこそ、移行は「フォルダをドラッグして終わり」ではありません。先にどの単位で共有ドライブを分けるかを設計する必要があります。部門ごと、プロジェクトごと、あるいは機密度ごと——業務の実態に合わせて箱の切り方を決め、それぞれに誰をどの権限(閲覧者・編集者・管理者)で入れるかを決めてから、中身を移す。この順番を守らないと、容量や情報の整理どころか、見えてはいけない人に情報が見える事故を自分で作り込むことになります。機密ファイルの所在管理そのものを整えたい場合は、ドライブのAI分類とラベル・DLP設計 と合わせて考えると、移行と同時にガバナンスも一段引き上げられます。

発注者として押さえる移行の段取り

移行を外部に任せるにせよ社内でやるにせよ、発注者・依頼者として結果を左右する判断は、次の順番で固まります。

第一に、現状の可視化です。誰のマイドライブに、どんな業務資産が、どれだけ眠っているか。特に「一人にしか所有権がない重要ファイル」を洗い出すことが、優先度づけの土台になります。第二に、箱の設計。共有ドライブをいくつ、どういう単位で作り、それぞれのアクセス権をどうするか。ここが移行プロジェクトの品質の8割を決めます。第三に、移行と検証。実際にファイルを移し、移した後に「本来アクセスできるべき人が開ける/開けるべきでない人が開けない」を必ず確認する。移してから権限を放置するのが、いちばんありがちな失敗です。

なお、共有ドライブに全部移せば容量が減るわけではない点にも注意が必要です。共有ドライブのファイルも組織の共有ストレージプールを消費します。移行を機に不要ファイルの棚卸しも同時に進めると効率がいいので、ストレージ逼迫の直し方 の可視化の手順も並行して使ってください。導入初期でまだ運用ルールが固まっていない段階なら、Google Workspace 導入完全ガイド の初期設計から見直すのが結局は近道です。

どこから手をつけるか

まずやってほしいのは、「もし今、社内のキーパーソンが一人いなくなったら、業務が止まるファイルはどこにあるか」を一度だけ真剣に考えてみることです。その答えが特定の個人のマイドライブを指すなら、それが最優先で共有ドライブへ移すべき資産です。会社の資産を個人任せにしたままにするか、組織の持ち物として設計し直すか——この判断を先延ばしにするほど、いざ退職や異動が起きたときの被害は大きくなります。

共有ドライブの箱をどう切り、権限をどう設計し、既存の共有設定を壊さずに移すか。自社の部門構成や機密度に合わせた落としどころは会社ごとに違います。現状の棚卸しから移行後の運用ルールまで、事故を起こさない段取りで一緒に組み立てます。

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記事を書いた人

鈴木 翔

鈴木 翔

技術の可能性に魅了され、学生時代からプログラミングとデジタルアートの分野に深い関心を持つ

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