「ChatGPT に考えさせたキャッチコピーを、そのまま自社サイトと広告に載せていいものか」「Gemini で作った画像を会社案内や SNS 投稿に使いたいが、あとで問題にならないか」——生成AIを販促に使い始めた中小企業から、いま最も多く寄せられる不安がこれです。便利なのは分かっている。けれど、その文章や画像は結局のところ誰のものなのか、勝手に商用利用して怒られないのか、そこがはっきりしない。だから手が止まる。
先に結論めいたことを言うと、この問いには「一律にYES/NO」で答えられません。生成物そのものの著作権の話と、使ったサービスの利用規約の話と、出力が既存の作品に似ていないかという話は、それぞれ別のレイヤーで、判断の根拠も違うからです。本記事では、法律の専門家でない担当者が「少なくともここは自分で確認できる」という土台を持てるよう、日本の公的な整理と主要サービスの規約に即して、この三つのレイヤーを分けて整理します。なお本記事は法的助言ではありません。重要な用途の最終判断は必ず弁護士等の専門家に確認してください。
レイヤー1:そもそも生成物に著作権はあるのか
最初に押さえたいのは、「AIが作ったものに著作権があるか」という論点です。日本の著作権法では、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義され、保護されるのは人間による創作です。文化庁の文化審議会がまとめた「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年)では、AIを道具として利用して生成したものについて、利用者に「創作的寄与」があると認められる場合には著作物に当たり得る一方、AIが自律的に生成したにすぎないものは著作物と認められない、という方向性が示されています。プロンプトの内容や試行錯誤の量など、事案ごとに個別に判断される、という整理です。
ここで実務担当者が誤解しやすいのが、「著作権がない=使ってはいけない」ではない、という点です。むしろ逆で、AI生成物に著作権が認められにくいということは、あなたがそれを使えると同時に、他社も似たものを自由に使える可能性があるという裏返しの意味を持ちます。苦労して作らせたキービジュアルに独占的な権利が及ばず、競合が酷似した画像を使っても止められない、という事態が起こり得るわけです。ブランドの中核に据えるビジュアルほど、この「守れなさ」を意識しておく必要があります。ただしこの領域は各国の判断や事例の蓄積で動いており、断定はできません。判断の拠り所は、あくまで文化庁などの公的な整理に置くのが安全です。
レイヤー2:商用利用の可否はサービスの規約で決まる
著作権の話とは別に、そもそもそのサービスの生成物を商用利用してよいかは、各サービスの利用規約が定めます。そしてこれはサービスごとに、さらに同じサービスでも無料版・有料版・API で条件が違うことがあります。
たとえば OpenAI の利用規約は、入力(Input)の権利は利用者が保持し、出力(Output)についても OpenAI が持ち得る権利を利用者に譲渡する、という趣旨を定めており、商用利用も許容されています。Google の「生成 AI の追加利用規約」も、サービスによって生成されたオリジナルコンテンツについて Google は所有権を主張しない旨を記載しています。一方で、無料版には利用回数やデータの取り扱いに制限があったり、商用利用を前提とするなら法人向けプランが想定されていたりと、細かな条件はプランごとに異なります。
大事なのは、これらは記事や伝聞ではなく、必ず自分で、いま契約しているプランの規約の該当箇所を確認することです。規約は更新されます。半年前に問題なかった使い方が、いまも同じとは限りません。ここで固めたルールは、社内で誰がどのツールをどう使うかという運用の話と一体で運用しないと形骸化します。使ってよいツールとプランを会社として決める考え方は社内のAI利用ルール・ガイドライン整備の実務で、シャドーAIを含めた運用の落とし穴は生成AI利用ガイドラインの作り方で整理しています。規約確認は、この社内ルールに「採用したツールの規約は誰がいつ確認したか」を記録する形で組み込むのが現実的です。
レイヤー3:学習データ由来の侵害リスク
三つ目が、実務では最も見落とされがちで、最も怖いレイヤーです。生成AIの出力が、既存の著作物・キャラクター・ロゴや商標に酷似してしまうリスクです。規約上は商用利用できて、AI生成物に強い著作権が及ばないとしても、その出力がたまたま実在の作品そっくりだった場合、それをそのまま使えば既存の権利者に対する著作権侵害や商標権侵害になり得ます。これは「AIが作ったから責任がない」では済みません。使って世に出した側の責任です。
日本の著作権侵害は、大まかに言えば「既存の著作物に依拠していること」と「表現が類似していること」で判断されます。文化庁が令和6年に公開した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」でも、利用者が侵害を避けるための観点として、生成物と既存著作物との類似性を確認すること、依拠が疑われる使い方を避けることが挙げられています。特に、特定のキャラクター名や作家名、既存ブランド名をプロンプトに入れて「〜風」に作らせた出力は、意図せず似てしまうリスクが高く、そのまま販促に使うのは危険です。
| レイヤー | 何を判断するか | 拠り所 |
|---|---|---|
| 生成物の著作権 | 自社が独占できるか/他社も使えるか | 文化庁の公的整理・個別判断 |
| 商用利用の可否 | そのサービスで商用に使ってよいか | 各サービスの利用規約(プラン別) |
| 侵害リスク | 既存の作品・商標に似ていないか | 類似性・依拠性の確認 |
使う前に確認する実務チェック
三つのレイヤーを踏まえると、担当者レベルでできる確認は具体的に決まってきます。第一に、使うサービス・プランの利用規約の該当箇所を確認すること。商用利用の可否と生成物の権利帰属を、伝聞ではなく原文で確認し、確認日を残します。第二に、類似物チェック。重要な用途に使う文章や画像は、公開前に画像検索や商標検索で「既存の何かに酷似していないか」を軽くでも確認する。ロゴやキャラクター、有名なコピーに似ていないかは特に。第三に、生成の記録を残すこと。どのツールで、どんなプロンプトから、いつ作ったか。何かあったときに「意図的に似せたのではない」と説明できる材料になります。AIで作ったコンテンツの来歴を電子透かし等で残す考え方はAIコンテンツの来歴・電子透かしでも扱っています。
そして第四に、重要な用途は専門家に確認すること。全社ロゴ、主力商品のパッケージ、大規模に出稿する広告のように、後戻りしにくく影響が大きいものは、担当者判断で走らせず弁護士等の確認を挟む。逆に言えば、社内メモや下書きのように影響が小さいものまで専門家確認を求める必要はありません。用途の重要度で確認の深さを変えるのが、現実的で回るやり方です。
次にやること
この記事を読んで最初にやるべきことは、二つに絞れます。ひとつは、いま自社が使っている生成AIサービスの利用規約の「商用利用」と「権利帰属」の項目を、実際に開いて読むこと。契約プランごとに、です。もうひとつは、すでに販促に使ってしまった生成物がないか棚卸しし、影響の大きいもの(ロゴ・広告・パッケージ)だけでも類似チェックを一度かけること。この二つで、「知らずに踏んでいたかもしれない地雷」の大半は見えてきます。そこから先、AI生成画像を内製するか外注するかといった運用設計はAI生成画像を販促に使うときの内製・外注の判断を参考に、自社のペースで固めていけば十分です。
グリームハブは、Webサイトや広告のクリエイティブ制作と、企業のAI活用の伴走に取り組んできました。「生成AIで作ったものを販促に使いたいが権利面が不安」「社内でAIを安全に使うルールと運用を整えたい」——そうしたお悩みがあれば、開発・AI・自動化のご相談窓口からお気軽にどうぞ。規約確認の勘所づくりから、安全な制作フローの設計まで一緒に整理します。なお、権利関係の最終的な法的判断については弁護士等の専門家への確認をおすすめしています。