
「今のサイト、Wix Studio に切り替えたいんですが、いくらくらいですか」
この聞き方をされたときは、金額の前に確認することがあります。Wix Editor で作ったサイトを、Wix Studio のサイトに変換する機能は用意されていません。「切り替え」ではなく「作り直し」の見積もりになります。この前提がずれたまま話を進めると、提示された金額を見て「なぜそんなにかかるのか」という話になり、双方が消耗します。
同じ Wix という名前が付いているせいで、新しいバージョンに上げるだけだと受け取られやすいところです。実際には設計思想の違う2つのものです。
バージョン違いではなく、対象が違う
Wix Studio は、制作会社・フリーランス・企業の制作チーム向けに設計されたプラットフォームです。Wix 側もそのように位置づけています。複数のサイトを横断して管理するワークスペース、チームでの作業、クライアントごとの権限設定といった機能は、サイトを1つ持っている事業者ではなく、サイトを何十個も作る側のための機能です。
一方の Wix Editor は、テンプレートを選んで要素を置いていく作り方です。細部を詰めようとすると制約を感じる場面はありますが、公開までの距離は短く、社内の担当者が自分で更新していく前提に合います。
| 見るところ | Wix Editor | Wix Studio |
|---|---|---|
| 想定している使い手 | 事業者本人・小規模チーム | 制作会社・フリーランス・制作チーム |
| レスポンシブ対応 | 画面幅ごとに個別に調整する場面が多い | 自動レスポンシブが前提の作り |
| 管理の単位 | 1サイト | 複数サイトを横断するワークスペース |
| クライアントへの引き渡し | 想定していない | 権限を分けて渡す仕組みがある |
| 既存サイトの持ち込み | — | Editor サイトを Studio サイトに変換することはできない |
表の最後の行が、実務上いちばん効きます。既存の Wix サイトを Wix Studio のワークスペース側で管理したり編集したりすること自体は可能ですが、そのサイトのエディタは元のままです。Wix Studio のエディタで作り直したい場合、新しくサイトを作って中身を移すことになります。
発注者が判断すべきなのは「誰が更新し続けるか」
機能表を見比べても、発注する側の判断材料にはなりません。分かれ道はもっと手前にあります。
公開したあと、ページの文言や写真を誰が直すのか。
社内の担当者が自分で直していく前提なら、制作者向けの機能が増えたところで日々の運用は楽になりません。むしろ画面が複雑になった分、更新のたびに触るのが億劫になります。この場合、いま Wix Editor で動いているサイトを作り直す理由は薄いです。全面リニューアルではなく継続的な改善で足りるケースがここに当たります。
逆に、更新も含めて制作会社に任せ続ける前提で、かつページ数が増えていく見込みがあるなら、制作側が Wix Studio を使う意味は出てきます。ただしそれは制作側の作業効率の話であって、発注側が直接得るものではありません。提案されたときは、そこを分けて説明してもらってください。

作り直しになると、何が発生するのか
「作り直し」という言葉が指す作業を、具体的に並べておきます。金額の内訳を読むときの目安になります。
- ページの再構築。 デザインを踏襲する場合でも、エディタが違うので配置し直しになります
- コンテンツの移送。 テキストと画像を1ページずつ移します。ページ数がそのまま工数に効きます
- URL の維持。 同じ URL 構成を保てるか確認します。変わるなら、旧 URL から新 URL への転送の設定が必要です。ここを飛ばすと、検索から来ていた流入が消えます
- フォーム・予約・EC などの再設定。 アプリや外部連携を使っている場合、それぞれ設定し直しになります
- 公開後の確認。 表示崩れとリンク切れの確認は、ページ数に比例します
このうち発注側が最も見落とすのが URL の維持です。デザインが同じでも、URL が変われば検索エンジンから見れば別のページです。見積もりに転送設定の項目が入っているかを確認してください。
なお、そもそも Wix と他の選択肢を比べる段階であれば、Wix と WordPress のどちらで作るかとノーコードのサービス比較を先に読んだほうが、判断の順番として自然です。
提案されたときに聞く3つのこと
1. アカウントの名義は誰になりますか。 サイトが制作会社のアカウント配下で作られると、契約が終わったときに自社でサイトを触れません。Wix Studio にはクライアントへ権限を分けて渡す仕組みがありますが、使われるかどうかは運用次第です。名義と、譲渡の手順を契約書に書いてもらってください。
2. 契約が終わったあと、誰が更新できますか。 制作会社が使いやすい環境と、自社の担当者が使いやすい環境は別です。将来的に社内で更新する可能性があるなら、その前提を先に伝えてください。
3. 今の URL は維持されますか。 上に書いたとおりです。「維持します」の一言ではなく、維持できないページがある場合の転送方針まで確認します。
3つとも、制作会社の選び方で確認する項目と重なります。プラットフォームが何であっても、この3つを曖昧にしたまま進めると後で困ります。
つまずきやすいところ
「新しいほうが SEO に強い」という説明は、そのまま受け取らないでください。 エディタの違いで検索順位が決まるわけではありません。作り直しのときに URL が変わったり、既存ページが減ったりすることのほうが、順位への影響はずっと大きいです。
費用の比較を、月額のプラン料金だけで行わないでください。 プラットフォームの利用料は、サイトにかかる費用の一部です。ホームページ制作の費用相場で整理しているとおり、制作費・更新の運用費・広告費を合わせて見ないと比較になりません。Wix Studio 側のプラン料金は制作者向けの体系になっているため、金額は公式の料金ページで現在の値を確認してください。
次にやること
自社サイトのページ数を数えて、そのうち直近1年で1回以上更新したページが何枚あるかを出してください。
更新しているページが数枚しかないなら、作り直しの費用をかける対象はサイト全体ではありません。動いているページを直すほうが先です。逆に多くのページを継続的に触っているなら、更新のしやすさは実際のコストなので、乗り換えを検討する意味があります。
既存サイトの作り直しが必要かどうかの判断、URL を維持したままの移行、公開後に自社で更新できる構成の設計については、グリームハブのHP制作・リニューアル相談で承っています。現在のページ構成と更新の体制によって進め方が変わるため、お問い合わせからご相談ください。




