サイトのリニューアルを検討し始めた会社から、最初に確認しておきたい質問があります。「今のサイト、どこのサーバーに置いてあるか分かりますか」
答えられないことが珍しくありません。5年前に頼んだ制作会社が「サーバーはこちらで用意します」と言って、それきり。請求書には毎月「保守費」としか書かれていない。ドメインの管理画面のIDも分からない。
この状態でも、サイトが動いている間は困りません。困るのは、制作会社を変えたくなったときと、その制作会社が事業を畳んだときです。いずれも、管理権限を引き継げるかが問題になります。
「サーバーを用意します」の中身は3種類ある
まず、選択肢の側を整理します。コーポレートサイトの置き場所は、実務上おおむね3つに分かれます。
| 置き場所 | 向いているサイト | 発注側にとっての注意点 |
|---|---|---|
| レンタルサーバー | WordPress など、サーバー側でページを組み立てるサイト | 契約名義が制作会社になりやすい。PHPのバージョン更新が保守範囲に入っているか要確認 |
| 静的ホスティング | あらかじめ書き出したHTMLを配信するサイト | 表示は速く運用も軽いが、更新の仕組みが別途必要。誰が公開作業をするかを決めておく |
| クラウド(GCP/AWS等) | 会員機能や外部システム連携があるサイト | 従量課金のため費用が読みにくい。請求の宛先を自社にできるか確認する |
どれが優れているという話ではなく、サイトの作りに対して過不足がないかで選びます。静的ホスティングもクラウド上で提供されます。分類は排他的ではなく、必要な更新機能・運用体制・料金上限を基準に選びます。逆に、更新のたびに制作会社へ依頼が必要な作りにしてしまうと、サイトを継続的に直していく運用が回らなくなります。
なお近年は、データを国外に出さないことを掲げた欧州のホスティング事業者が相次いで登場するなど、サーバーの物理的な所在地を選択肢として明示する動きも出てきています。国内の中小企業でこれが要件になる場面は限られますが、取引先の情報を扱うフォームがあるサイトでは、置き場所を把握しておく理由のひとつになります。
乗り換えで実際に止まる4か所
置き場所そのものより厄介なのが、移す段階です。技術的な難所は思ったより少なく、止まるのはほぼ決まった4か所です。

1. ドメインの名義
example.co.jp の登録名義が自社になっているか。制作会社の名義で取得されている場合、移管には相手の協力が必須です。関係が良好なうちは問題になりませんが、揉めた状態からの移管は時間がかかります。登録者・契約者と、管理画面を操作できる担当者は別々に確認します。ログインできるだけで、自社が登録者だと確認できたことにはなりません。
2. DNSの管理場所
ドメインを持っていても、どのサーバーを見に行くかを決めるDNSの設定権限が別のところにあると、切り替えのタイミングを自社で決められません。サイトだけ新しいサーバーに用意できていても、DNSを変更してもらえなければ公開されません。
3. メール
ここが一番見落とされます。info@example.co.jp のような独自ドメインのメールが、サイトと同じレンタルサーバーで動いているケースが多くあります。サイトだけ移すつもりで手続きを進めると、メール用の MX レコードを落としたり、メールサーバーまで解約したりすると、会社のメールが止まります。Web 用の A / CNAME レコードだけを適切に変更するなら、メールまで同時に移す必要はありません。 移行計画を立てる前に、メールがどこで動いているかを必ず確認してください。
4. 公開の手順
新しいサイトを誰がどうやって公開するのか。制作会社のローカル環境からしかアップロードできない作りになっていると、その会社を離れた時点で更新手段が消えます。ソースコードの置き場所と、公開作業の権限が自社側にあるかを見ます。サイト更新の承認フローを誰が持つかという論点と、根は同じところにあります。
発注のときに聞いておくこと
これから制作を依頼する、あるいは既存のサイトを引き継ぐ場合、次の4点を見積もり段階で確認しておくと、数年後の選択肢が残ります。
- ドメインの登録名義を自社にできるか(すでに他社名義なら、移管の可否と手順)
- サーバーとDNSの契約を自社名義にできるか。できない場合の理由
- 独自ドメインのメールがどこで動くか。サイトと分けられるか
- サイトのソースコードを自社が受け取れるか。受け取ったものだけで公開できるか
この4点を聞くと、相手の答え方でおおよその見当がつきます。名義の話に具体的な手順で答えられる会社は、過去に引き継ぎを経験しています。「そのあたりは後で大丈夫です」と流す会社は、引き継ぎを想定していない作り方をしている可能性が高いところです。質問の目的は情報を得ることだけでなく、相手がどちらのタイプかを知ることにもあります。
4つとも「できます」と即答する会社もあれば、「うちの環境でないと動きません」と言う会社もあります。後者が悪いわけではありませんが、その前提でコストを比べる必要があります。 制作費が安くても、移せない構成であれば、次のリニューアルで作り直しになる分は先送りされた費用です。
費用の目安そのものはホームページ制作の費用相場にまとめてありますが、比較するときは金額だけでなく、この4点を同じ条件に揃えてから並べてください。
サーバーは決め直せる。名義は決め直しにくい
サイトの置き場所は、後から変えられます。作りが素直であれば、移行そのものは長くかかる作業ではありません。
一方で、ドメインの名義とメールの依存は、後から解くほど手間が増えます。先に押さえるべきはサーバーの種類ではなく、名義と権限がどこにあるかです。ここさえ自社側にあれば、置き場所の判断は必要になったときに落ち着いて選び直せます。
次にやること
自社のドメインが、どの事業者でいつまで登録されているかを確認してください。登録事業者の管理画面と契約情報で、登録者名・更新期限・連絡先を確認します。WHOIS / RDAP の公開情報は補助になりますが、非公開化や代理公開があるため、表示名だけで他社名義と判断しないでください。
あわせて、社内の誰がドメインとサーバーの管理画面にログインできるかを書き出しておいてください。担当者が1人しかいない状態は、業者に預けているのと実質同じリスクです。退職や異動でその1人がいなくなった瞬間に、権限を持つ人がゼロになります。
サイトのリニューアル、ホスティング構成の見直し、既存サイトの引き継ぎについては、グリームハブの HP制作・リニューアル相談で承っています。現在の構成とドメインの状況によって進め方が変わるため、お問い合わせからご相談ください。








