
別の制作会社に相談したら、開口一番「jQuery が使われていますね」と言われた。悪い意味の言い方だったので、そういうものかと思って全面リニューアルの見積もりを受け取った——という相談を受けることがあります。
jQuery は 2006年8月に公開され、2026年で 20年を迎えました。そして今も、統計によっては全ウェブサイトの 7 割前後で検出されます。 JavaScript ライブラリが検出されるサイトに限れば、その大半が jQuery です。使われていること自体は、少なくとも「古いから作り直す」の根拠にはなりません。
一方で、作り直したほうがいい状態も実在します。分かれ目は jQuery そのものではなく、別のところにあります。
そもそも何が起きているのか
jQuery が広く使われた理由は、ブラウザごとに書き方が違って面倒だった処理を、統一された短い書き方で済ませられるようにしたことでした。その後、ブラウザ側の標準機能が追いついたため、新規開発でわざわざ選ぶ理由は薄れています。
ただし「新規で選ばない」と「今動いているものを外す」は別の判断です。上位 1 万サイトのような大規模サイトでは利用が明確に減っている一方、WordPress のテーマやプラグイン、既存の業務システムの画面では現役で残り続けています。WordPress を使っている限り、テーマやプラグイン側が jQuery を読み込むため、サイト側の意思だけでは外せないことも珍しくありません。
つまり、jQuery を外すかどうかは技術的な好みの問題ではなく、外せる構造になっているかどうかの問題です。
作り直しの理由になる 3 つの状態
発注する側が見るべきは、次の 3 点です。
古いバージョンのまま止まっている。 これは唯一、明確な期限のある問題です。jQuery 3.5.0 より前のバージョンには、CVE-2020-11022 と CVE-2020-11023 として公表された既知のクロスサイトスクリプティングの脆弱性があります。外部から受け取った内容を画面に差し込む処理を持つサイトでは、実害につながり得ます。バージョンの確認だけなら、制作会社に「いま入っている jQuery のバージョンを教えてください」と聞けば済みます。
触れる人がいない。 制作した会社との関係が切れていて、社内にも読める人がいない状態は、jQuery かどうかに関係なく危険です。文字ひとつ直すのに毎回見積もりが必要な構造になっているなら、サイトを引き継げる形にしておくことのほうが優先されます。
プラグインの積み重ねで動いている。 十数年分のプラグインが層になっていて、どれを外すと何が壊れるか誰も分からない。この状態は、部分的な改修の見積もりがかえって高くつきます。
| 状態 | 妥当な打ち手 |
|---|---|
| jQuery は古いが、バージョンは新しく保守できている | 何もしない |
| バージョンが 3.5.0 より前で止まっている | まず更新する。作り直しとは別件 |
| 触れる人がいない・依存関係が追えない | 土台から作り直す判断に入る |

WordPress の場合、話がもう一段ややこしい
コーポレートサイトの多くは WordPress で動いています。この場合、jQuery を「外す」という表現が指す対象が 2 つに分かれます。
ひとつは、テーマや自作の処理が読み込んでいる jQuery です。これは制作側の判断で外せます。もうひとつは、インストールしているプラグインが自前で読み込んでいる jQuery です。こちらはプラグインを外さない限り消えません。プラグイン側が古い書き方に依存していると、jQuery のバージョンを上げただけで動かなくなることもあります。
その差を埋めるために jQuery Migrate という補助的な仕組みが読み込まれている場合があり、これが入っていること自体が「古い書き方が残っている」ことの目印になります。
つまり、WordPress サイトで jQuery の話をするときは、「サイト側で外せる部分」と「プラグインを入れ替えないと外せない部分」を分けて見積もる必要があります。一括で「jQuery を撤去します」という見積もりが出てきたら、どちらの話かを確認してください。 後者を含む場合、実質的にはプラグインの入れ替えとテスト工数の話になります。
「jQuery を外す」だけの改修が割に合わない理由
仮に、保守もできていてバージョンも新しい状態で、jQuery を外すこと自体を目的に改修したとします。
見た目も機能も変わりません。表示速度はいくらか改善しますが、多くのコーポレートサイトにとって、その差は問い合わせ件数を動かす大きさではありません。費用をかけて、利用者から見た変化がゼロという結果になります。
同じ予算を使うなら、表示速度なら何が実際に遅延の原因になっているかを測ってから手を入れるほうが効きます。土台ごと作り直すなら、jQuery を外すことではなく、公開後に自社で更新できる形にすることを目的に据えたほうが、後の費用が下がります。
作り直すか直し続けるかという判断そのものは、サイトの状態と社内の体制で決まる部分が大きく、使われているライブラリの名前で決まるものではありません。
次にやること
いま持っているサイトについて、制作会社に 2 つ質問してください。
ひとつ目は「jQuery のバージョンはいくつですか」。3.5.0 より前なら、作り直しの検討とは切り離して、更新の可否をすぐに確認する必要があります。ふたつ目は「テキストを 1 行直すのに、どういう作業が発生しますか」。この答えが「毎回こちらで作業します」であれば、問題は jQuery ではなく、更新できない構造のほうです。
サイトの現状評価、作り直すべきかどうかの切り分け、公開後に自社で更新できる形での再構築については、グリームハブのHP制作・リニューアル相談で承っています。現在の構成によって最適な進め方が変わるため、お問い合わせからご相談ください。




