情報漏洩対策としてDLPのルールを組んだのに、管理コンソールのレポートを見るとブロックされた件数がほぼゼロのまま、という状態になっていないでしょうか。
ゼロ件だけでは、ルールが正しく働いていないとは判断できません。違反がない可能性もあります。ラベルを条件にしているルールなら、対象ファイルにラベルが付いているかを確認します。DLP には本文のパターンなどで検知する方式もあり、すべてのルールがラベルを必要とするわけではありません。
「機密」「社外秘」といったラベルを付ける運用を決めても、実際に付けるのは書いた本人です。日々作られる見積書や議事録に、誰も手作業でラベルを付け続けません。結果として、ラベルを条件にしたルールは永遠に発火しません。Gemini によるドライブのデータ分類は、このラベル付けを補助するものです。
ラベルが付かないと、後工程が全部止まる
ドライブのラベルは、単に見出しを付ける機能ではありません。後ろにぶら下がっている仕組みが3つあります。
| 使い道 | ラベルが無いとどうなるか |
|---|---|
| DLP の条件 | 「機密ラベルの付いたファイルは外部共有を禁止」が発火しない |
| 保持ルール | 契約書だけ7年保持、のような区別ができない |
| 監査・調査 | 事故のときに「何が出たのか」を種類で絞り込めない |
ラベルを条件にする場合は、分類に加えて、それぞれのルール・対象範囲・ライセンスも設定する必要があります。ラベルが付くだけで DLP や保持ルールが自動で完成するわけではありません。
これまでも自動分類の仕組み自体はありました。ただし、正解のサンプルを集めて学習用のモデルを作る前提だったため、中小企業では現実的に手が出ませんでした。「機密の見積書を200件用意してください」と言われて用意できる情シスはほとんどいません。
変わったのは「サンプルを集めなくてよくなった」こと
今回オープンベータで出たのは、管理者が言葉で書いた指示に沿ってGeminiが分類する方式です。学習用のサンプルを集める工程が、管理者が書く分類の説明文に置き換わりました。
やることは、分類の定義を文章で書くことです。たとえば「取引先の社名と金額が含まれる見積書・請求書は『社外秘』」のように、自社の言い方で書きます。モデルの訓練ではなく、社内ルールの明文化に近い作業になります。

この形は、情シスの負担の質を変えます。従来は「付いていないラベルを追いかける運用」でしたが、これからは「分類の定義が実態と合っているかを見直す運用」になります。見直しの頻度は、初期の誤分類率や文書の変化に合わせて決めます。

公式デモでは、区分ごとに分類の基準を文章で定義しています。画面はデモ動画の一場面です。 出典:Google Workspace公式資料。
展開時期と、始める前に確認すること
公式案内では、両リリース方式ともオープンベータを段階展開し、2026年9月30日までの完了を目標としています。対象は Enterprise Plus、Frontline Plus、Google AI Pro for Education です。DLP が使えるだけで、この分類機能も利用できるとは限りません。
有効にする前に、次の3点を確認してください。
- 自社のエディションでDLPが使えるか。 ラベルを付けても、それを条件にするDLPが使えなければ、後工程が動きません。Businessプランでの制約と代替手段はGoogle WorkspaceのDLPはBusinessプランでは使えないにまとめています。ここが先です。
- 分類の対象をどこから始めるか。 全社の全ファイルを一度に対象にすると、初回の結果を誰も検証できません。部門を1つ選び、そこで定義の精度を見てから広げます。
- ラベルの体系が今いくつあるか。 使われていないラベルが10個以上並んでいる状態で自動分類を始めると、どれに寄せるかで揉めます。先に整理してください。
誤分類は「起きる前提」で運用に載せる
自動分類を入れるときに必ず聞かれるのが、間違ったラベルが付いたらどうするのかです。これは起きます。前提として設計に織り込んでください。
実務で効くのは、厳しい方向の誤りと、緩い方向の誤りを分けて考えることです。
本来は社外秘でないファイルに社外秘が付いた場合、困るのは業務の側です。共有できずに担当者が止まりますが、事故にはなりません。剥がす手順を用意しておけば足ります。
逆に、本来は社外秘のファイルに何も付かなかった場合は、対策が素通りします。こちらが本当のリスクです。だからこそ、自動分類を入れても「ラベルが付いていないファイルは外に出してよい」という設計にはしないでください。ラベルの有無ではなく、置き場所と共有範囲でも守りを重ねておく必要があります。個人のマイドライブに機密が残り続ける構造そのものを直す話は会社のファイルが個人任せになっていませんかで扱いました。
あわせて、ルールを入れっぱなしにしない運用も要ります。分類の定義は事業が変われば陳腐化します。DLPを「一度作って終わり」にしないの考え方が、そのまま分類の定義にも当てはまります。
広げる順番は「古いファイル」からではない
もう1つ、実務で判断が分かれるのが対象範囲の広げ方です。過去のファイルを全部分類したくなりますが、そこから始めないでください。
理由は単純で、古いファイルを件数だけで優先すると、リスクの高い文書が後回しになるためです。既存ファイルも、分類後に DLP の対象となれば共有制御が変わる場合があります。件数だけが膨らみ、初回の結果を検証する気力が尽きます。
順番としては、これから作られるファイルを先に分類の対象にし、過去分は「外部共有されているもの」に絞って後から当てるのが現実的です。前者は放置すると同じ問題が増え続けますが、後者は件数が有限で、しかも優先順位を付けられます。外部共有の一覧を作る手順そのものは別の話になるため、そこから始める場合は棚卸しを先に済ませてください。
次にやること
まず、いま自社のDLPルールが月に何件発火しているかを見てください。 ゼロに近ければ、違反の有無、ルールの対象範囲、監査のみの設定、ラベル条件の充足を順に確認します。テスト用ファイルで想定どおり検知するか確かめてください。
そのうえで、分類の定義を書く人を決めてください。 これは情シスだけでは書けません。どの書類が社外秘なのかを知っているのは、営業や経理の担当者です。管理コンソールの操作より、この一文を誰が書くかのほうが結果を左右します。
Google Workspace のラベル設計、DLPルールの棚卸し、データ分類のベータ適用の進め方については、グリームハブのIT・Google Workspace 無料相談で承っています。エディションと現在のラベル運用によって進め方が変わるため、個別にご相談ください。お問い合わせからどうぞ。









