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「WordPressは大丈夫なんですか」と聞かれたときの答え方

目次 · 6項目

海外のニュースを見た役員から「うちのサイトはWordPressだったよな。あれは大丈夫なのか」と聞かれて、答えに詰まった。そんな連絡を、9月中旬に何件かいただきました。聞かれた側としては「問題ありません」と即答したいところですが、根拠のない即答は次に何か起きたときに効かなくなります。

この質問には、分けて答えたほうが正確に伝わる部分があります。会社で起きたことと、サイトが動き続けるかどうかは、同じ話ではありません。かといって無関係でもない。その線引きをどこに引くかが、この質問の本題です。

報じられているのは、9月の1週間の動き

まず事実関係を、報じられている範囲に限って整理します。推測の部分は推測として扱います。

2026年9月9日、WordPressの開発を主導する Automattic の取締役会が、CEO の Matt Mullenweg 氏を有給の休職とする決議を行ったと報じられました。数日後の9月11日には、Mullenweg 氏が社内のSlackで自分が経営に復帰したと社員に伝え、9月12日に Automattic が、同氏が取締役会の支持を得て会長兼CEOに復帰したと発表しています。さらに14日には、決議に関わった経営幹部や取締役が会社を離れたとする報道が出ました。

取締役会が動いた理由は、今のところ公表されていません。 Automattic はホスティング事業者の WP Engine との訴訟を抱えており、それとの関連を指摘する報道もありますが、因果として確認されたものではありません。ここを断定して社内に説明すると、あとで訂正が必要になります。

社内向けには「経営体制をめぐる動きが短期間にあり、理由は公表されていない」という説明で十分です。分かっていないことを分かっていないと言えるほうが、信頼されます。

会社とソフトウェアは、別だが完全には別でない

ここが答え方の核心です。

WordPress はオープンソースのソフトウェアで、ライセンスの下で誰でも使え、改変でき、配布できます。コードは手元にあり、動かしているのは自社の契約したサーバーです。 ある会社の経営陣が入れ替わっても、いま動いているサイトのファイルが消えることはありません。この意味で、両者は別です。

一方で、WordPress の開発や配布の中心には Automattic と、同社の創業者が関わる組織があります。プラグインやテーマの配布元、コアの開発方針、商用サービスとの関係など、エコシステムの運営に実質的な影響力が集まっている構造は事実としてあります。この意味では、完全に別とは言えません。

役員への説明としては、この2段階で伝わります。

  • 今日・明日サイトが止まるかどうか — 止まりません。サイトの稼働は自社のサーバー契約とファイルに依存しており、開発元の経営状況で切られるものではありません
  • 数年単位の見通しがどうか — エコシステムの運営に依存する部分があり、注視する対象ではあります

この2つを一緒にすると、「大丈夫」も「危ない」もどちらも嘘になります。

体制を見るなら、見る項目を決めておく

「運営元が不安定かもしれない」という漠然とした心配は、放っておくと数年おきに再燃します。見る項目を決めておくと、そのたびに考え直さずに済みます。

CMSの運営体制を評価する4つの観点。ライセンスと移行可能性、リリースの継続性、エコシステムの分散度、自社の依存の深さを並べた図

  • 持ち出せるか。 コンテンツと画像を、標準的な形式でまとめて取り出せるか。取り出せるなら、運営元の問題は「移行のコスト」の話に落ちます。取り出せない場合だけ、本当のリスクになります
  • 更新が続いているか。 セキュリティ修正が実際に出続けているか。組織の話より、リリース履歴のほうが早く実態を映します
  • 一社に寄っていないか。 コアの開発、ホスティング、プラグイン、テーマが特定の一社に集中しているか、複数の担い手に分散しているか
  • 自社がどこまで深く使っているか。 標準機能の範囲で使っているのか、独自のプラグインやテーマを積み上げているのか。深いほど、運営元の変化の影響を受けます

この4つ目が、実務では一番効きます。同じCMSでも、使い方によってリスクは何倍も違うからです。標準的な構成のコーポレートサイトなら、乗り換えは選択肢として現実的に残ります。独自開発を積み重ねたサイトは、CMSを変える判断が事実上できない状態になっていることがあります。その状態が、運営元の動きに敏感になる本当の理由です。

乗り換えるかどうかは、体制の話では決まらない

ニュースを契機に「別のCMSに移すべきか」と考え始めるのは自然ですが、判断の材料はニュース側ではなく自社側にあります。

そもそも WordPress を選ぶべきかどうかは、更新する人が誰で、どのくらいの頻度で何を変えるのかで決まります。この整理は発注前に決めておくCMS選定で扱っていて、体制の話が入る前の段階です。他の選択肢との比較が必要ならWordPressとWixのどちらで作るかが出発点になります。

移行を検討する場合、実際のコストは「CMSを変えること」ではなく「積み上がった独自実装を解くこと」に出ます。古い依存が残ったサイトのリニューアル判断はjQueryへの依存が残るサイトの作り直しと同じ構造で、CMSの名前より中身の状態が費用を決めます。

もうひとつ。運営元の変化を理由に乗り換えた先にも、運営元があります。 特定の企業が開発するCMSやSaaSに移れば、同じ種類のニュースが数年後に別の名前で届きます。乗り換えで消えるのは今回の心配だけで、構造は残る。減らせるのは、依存の深さのほうです。この考え方は、開発に使うライブラリの提供元が変わったときの整理とも共通します(提供元の変化と、依存の見直し)。

次にやること

役員に答える材料として、まず1つだけ確認してください。自社サイトのコンテンツを、標準的な形式でまとめて書き出せるか。 管理画面のエクスポート機能で実際に書き出して、中身が開けることを見ておく。これができれば「最悪の場合でも持ち出せます」と事実として言えます。

そのうえで、独自のプラグインやテーマがどれだけ入っているかを制作会社に一覧で出してもらってください。その数が、運営元の動きに対する自社の敏感さです。数が少なければ、今回のニュースは見守るだけで済みます。

サイトの構成の棚卸し、CMSの選定やリニューアルの判断については、グリームハブのHP制作・リニューアル相談で承っています。いまの構成と更新の仕方によって取るべき選択肢が変わるため、お問い合わせからご相談ください。

Sources

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鈴木 翔

技術の可能性に魅了され、学生時代からプログラミングとデジタルアートの分野に深い関心を持つ

この記事のテーマを、自社の次の一歩へ

Webサイトで、実現したいことから。

使う人の目的、必要な機能、更新の体制を整理し、制作・改善で最初に取り組むことを考えます。

  • サイトの目的
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