「先月お客さんに送った見積もり、あれどのメールに添付したんだったか。探すのに十分かかりました」「新しく入った子に手順書の場所を聞かれたんですが、自分でもどのフォルダか思い出せなくて」——社員四十名ほどの会社を訪ねたとき、立て続けにこうした声を聞きました。
一件ずつは数分の話です。ですが、社員全員が毎日これを繰り返していると、「探す時間」は会社全体で見ると相当な量になります。しかも探している間は仕事が止まり、見つからなければ「もう一度作り直す」という最悪の無駄まで生まれます。2026年6月、Google WorkspaceでGeminiを使ってドライブ・Gmail・チャットを横断検索するAI検索が広く使えるようになりました。本記事では、これを「本当に探せる会社」に変えるために何が要るかを、受託で伴走する立場から書きます。
キーワードが一致しないと出てこない、が「探せない」の正体
まず、なぜ社内の資料はこれほど探しにくいのか。従来の検索は基本的に言葉の一致で動きます。ファイル名やメール本文に、探している言葉がそのまま入っていないと引っかかりません。
ところが現場の記憶は言葉で正確に残っていません。「たしか去年の秋ごろ、A社向けに作った、値引きの話が入った見積もり」——人はこういう曖昧な手がかりで探します。ファイル名が「見積書_最終_v3.xlsx」だったら、この記憶からはまず一発でたどり着けません。ここに、Geminiによる横断検索が効いてきます。
Geminiの横断検索は何が違うのか
新しいAI検索は、ドライブのファイル、Gmailのやり取り、チャットの会話をまとめて対象にし、意味で探せるようになっています。「A社向けの値引きが入った見積もり」といった自然な言い回しで尋ねると、関連する候補を横断的に拾い、要点を短く示してくれます。置き場所がドライブなのかメールの添付なのかを、探す側が意識しなくてよくなるのが大きい。
ただし、ここで多くの会社が誤解します。「機能を有効にすれば、明日から全部探せる」わけではありません。 AIは、社内にある情報をもとに答えます。その情報が散らかっていれば、AIも散らかった結果しか返せない。社内ナレッジをAIに扱わせる設計そのものはNotebookLMで社内ナレッジをRAG化する記事でも扱いましたが、共通するのは「元の情報の整い方が、検索の質をそのまま決める」という点です。
受託で先に手をつけるのは「検索の設定」ではなく「情報の置き方」
だから私たちが相談を受けて最初に着手するのは、AI検索のスイッチを入れることではありません。情報の置き方と権限を整えることです。
同じ資料が三か所に別バージョンで存在する、退職者しか場所を知らないフォルダがある、共有ドライブと個人ドライブに情報が二重化している——こうした状態のままでは、AIは「どれが最新か」を判断できず、古い見積もりを堂々と提示してしまいます。それはむしろ危険です。だから、重複を減らし、置き場所のルールを決め、誰がどこまで見えるかの権限を整える。ここが片付いて初めて、横断検索は「信じて使える道具」になります。
事例: AI検索を入れる前に「フォルダの地図」を作った会社
具体例です(社名は伏せます)。「新しいAI検索を全社で使いたい」と相談を受けた製造業の会社がありました。ですが実態を見ると、部署ごとにドライブの使い方がばらばらで、同じ図面が複数のフォルダに散っていました。
そこで、いきなり検索を有効にするのではなく、まず現状のフォルダ構成を棚卸しして「地図」を作り、部署をまたいで重複していた資料を統合し、置き場所の命名と権限のルールを決めました。そのうえでGeminiの横断検索を有効化したところ、「探しても出てこない」「古い版が出てくる」という不満がほとんど消えました。効いたのは検索エンジンの賢さではなく、AIに読ませる前の情報を整えたことでした。社内の問い合わせ対応そのものを自動化する発想は社内ヘルプデスクをAIで自動化する記事ともつながります。
AI検索を入れると「見えてはいけないものまで見える」
最後に、必ず押さえる落とし穴です。横断検索を有効にすると、権限さえあれば、その人が本来意識していなかった機密ファイルまで検索で浮かび上がります。役員報酬の資料、人事評価、未公開の契約——これらが「うっかり広めの共有」になっていると、AI検索がその穴を白日の下にさらします。
つまりAI検索の導入は、権限設計の総点検とセットでなければなりません。便利さの裏で情報が露出しては元も子もない。私たちは検索を有効にする前に、必ず「誰が何を見られる状態か」を洗い直します。
社員が資料を探すのに時間を取られている、AI検索を入れたいが情報が散らかっていて不安、権限まで含めてきちんと整えたい——そうしたお悩みがあれば、グリームハブのIT・Google Workspace無料相談からお気軽にお問い合わせください。情報の棚卸しから、置き方と権限の整備、AI横断検索の安全な導入まで、無理のない範囲でご一緒します。