社内向けの手順書を更新したとき、周知はどうしているでしょうか。多くの会社で、チャットに「マニュアルを更新しました。ドライブの◯◯を確認してください」と流して終わりです。そして数か月後、更新前のやり方で作業していた人が見つかります。
本人に悪気はありません。読んでいないのではなく、読んだつもりで止まっているだけです。この差を検出する唯一の手段が理解度チェックですが、実際に作っている会社は多くありません。理由を担当者に聞くと、だいたい同じ答えが返ってきます。「設問を考えるのが面倒というより、マニュアルを読み直して、どこを問うべきか探すのが重いんです」。
つまり負担の正体は設問文の執筆ではなく、原典を読み直して問いに変換する作業のほうにあります。Googleフォームに入った変更は、まさにここに効きます。
ドライブの中身を情報源に指定できるようになった
Googleフォームの「作成を手伝って」(Help me create)が、クイズの生成に対応しました。作りたいクイズの内容をプロンプトで指示すると、Geminiが設問・選択肢・各設問の正解までを含んだクイズ形式のフォームを組み立てます。
重要なのは、そのプロンプトの中でドライブ上のファイルを情報源として参照できる点です。ドキュメント、スライド、PDFを指定すれば、その中身に沿った設問が作られます。「新入社員向けの経費精算マニュアル(このドキュメント)から、間違えやすい点を問う10問のクイズを作って」といった指示が通ります。
生成される設問の形式はラジオボタン、チェックボックス、選択式のグリッドなどに対応しており、クイズとしての設定(正解の指定を含む)も一緒に入った状態で出てきます。
展開は段階的で、迅速リリース(Rapid Release)ドメインには2026年7月24日から、計画的リリース(Scheduled Release)ドメインには8月5日から順次適用されています。機能が画面に現れるまで最大15日かかるため、今日見えていなくても数日後には来ている可能性があります。「うちにはまだ無い」で判断せず、週をまたいで確認してください。
自社がどちらのリリース区分なのかは管理コンソールで設定されています。区分の確認方法を含めた管理コンソールの歩き方はGoogle Workspace 管理コンソール入門にまとめています。
そのまま配ると、間違った正解を全社に配ることになる
ここが実務上いちばん大事なところです。生成されたクイズは下書きであって、成果物ではありません。
理解度チェックが他のAI生成物と決定的に違うのは、正解が組織の公式見解として配布される点にあります。設問文が多少ぎこちなくても実害はありませんが、正解が原典とずれていた場合、社員はそのずれた内容を「会社が正しいと言ったこと」として覚えます。しかも研修の記録上は「全員が正解した」として残るため、誤りが定着したことに誰も気づけません。
配る前に、少なくとも次は人が見てください。
- 正解が原典のどの記述に対応するかを1問ずつ確認する。 出典の段落を特定できない設問は、原典に書かれていない可能性があります
- 「例外あり」の項目が二択にされていないか確認する。 マニュアルに条件付きで書かれているルールは、単純な正誤問題にすると必ずどちらかが嘘になります
- 更新された箇所が問われているかを確認する。 手順変更の周知が目的なら、変更点が設問に入っていなければ意味がありません。生成AIは原典全体から均等に拾うので、変更点が抜けることがあります
AI生成物を業務の成果物として扱うときの検収の考え方そのものは、EYのAIレポート誤りから考えるAI成果物の品質保証でも扱っています。理解度チェックは社外に出ないぶん油断されやすいのですが、内部に誤りを固定する分だけ長く効きます。

効く場面と、効かない場面
この機能が効くのは、原典がドライブ上のテキストとして存在している研修です。逆に言えば、暗黙知でしか存在しない業務には使えません。
効く例として現実的なのは、次のあたりです。
- オンボーディング — 就業規則、経費精算、稟議のルール。文書が整っていて、毎年同じことを教える領域
- セキュリティ研修 — フィッシング対応、パスワード運用、情報の持ち出し。年1回の形骸化した研修に、実際に読んだかの確認を足せます
- 手順変更の周知 — 変更前後の差分ドキュメントを情報源に指定すると、変更点に絞った設問が作りやすくなります
一方で、動画マニュアルを主体にしている場合は情報源として指定しづらいので、台本や補足ドキュメントを別に用意する必要があります。動画側の作り方はGoogle Vidsで社内向けの動画マニュアルを作るを参照してください。
なお、Googleフォーム自体の業務での使い方(回答の集計、スプレッドシート連携、通知)はGoogleフォーム業務活用ガイドに、アンケート設計側のGemini機能はGoogleフォームのGemini質問候補にまとめています。
「実施した」ではなく「理解された」を残す
理解度チェックを入れる本当の価値は、点数そのものではありません。どの設問で全社的に間違いが集中したかが分かることです。
正答率が極端に低い設問が出たとき、疑うべきは社員の理解力ではなくマニュアルの書き方です。全員が同じところでつまずいているなら、その項目は原典の記述が曖昧だという証拠になります。研修を回すたびにマニュアル側が改善されていく循環が作れれば、クイズは測定器から改善装置に変わります。
そのためには、結果を集計したスプレッドシートを回ごとに残し、設問単位の正答率を見られる形にしておく必要があります。フォームの回答はスプレッドシートに出力できるので、ここは追加のツールなしで組めます。
次にやること
まず、いま社内で「読んでおいてください」で運用している文書を1本だけ選んでください。全部やろうとすると始まりません。いちばん事故が起きて困るもの、たとえば経費精算か情報の取り扱いルールが向いています。
その1本でクイズを生成し、正解を原典と突き合わせてから配る。ここまでを一度通せば、他の文書に広げるときの所要時間の見当がつきます。
社内マニュアルの整備から研修の運用設計まで含めて相談したい場合は、グリームハブのIT・Google Workspace 無料相談で承っています。文書の分量や体制によって現実的な進め方は変わるため、個別にご相談ください。お問い合わせからどうぞ。
Sources
- Use Gemini in Google Forms to quickly create a new quiz — Google Workspace Updates
- Google Workspace Weekly Recap - July 31, 2026 — Google Workspace Updates
- Create a form with Gemini in Google Forms — Google Docs エディタ ヘルプ
- Generate questions with Gemini in Google Forms — Google Docs エディタ ヘルプ
- 新しいリリースを確認する — Google Workspace 管理者 ヘルプ