
「Teams のチャットに全部残ってるんです。仕様の経緯も、客先とのやり取りも」——グループウェアの入れ替えを検討していて、ここで止まる会社は多いです。メールやファイルは移せると分かっても、チャットの3年分をどうするかが決まらない。 決まらないまま「じゃあ Teams は残しておきましょう」となり、2つのチャットツールが並走する状態が既定路線になります。
2026年8月25日、Google Workspace 管理コンソールのデータインポートで、Microsoft Teams のチャットデータを大規模に移行する機能が一般提供になりました。ただしこの機能は「Teams をまるごと引っ越す」ものではありません。先に何が移らないかを知っておくと、判断の順番が変わります。
移るのは、チャンネルの本文
Teams から Google Chat への移行は、Teams のチャンネルにあるメッセージを、Google Chat のスペースに移す機能です。移行元のチャンネルと移行先のスペースをどう対応させるかは、管理者がマッピングとして指定します。既存の Google Chat のスペースやメッセージが削除・変更されることはありません。
公表されている情報で、移行対象に含まれないものは次のとおりです。
- 添付ファイル(OneDrive や SharePoint 上のアイテム、および利用者の PC からアップロードされたもの)
- 返信が 500 件を超えるスレッド
- ボットが投稿したメッセージ
移行が終わるとレポートが生成され、スキップされたもの・失敗したもの・警告が出たものが確認できます。初回の移行のあとに Teams のチャンネルへ追加されたメッセージを、あとから追加で移すこともできます。
つまり、移せるのは「文字として書かれた会話」であって、そこに貼られていた資料ではありません。
添付が移らないことの、実務的な意味
ここが判断の分かれ目です。
チャットの会話ログの価値は、多くの場合「会話そのもの」ではなく「その会話が、どのファイルについてのものだったか」にあります。「この見積もりの3ページ目、単価が違うと思います」という発言は、見積もりが一緒に見られる状態で初めて意味を持ちます。添付が抜けた状態で移すと、文脈が半分欠けたログが Google Chat 側に大量に積まれます。
これは検索の邪魔にもなります。移行後、Chat を検索した人は「関係のありそうな会話」に当たりますが、そこから先に進めません。「見つかるのに使えない」は、「見つからない」より始末が悪いことがあります。探すのをやめる判断ができないからです。
もう1つ、返信 500 件超のスレッドが対象外という制限も、実際には効きます。長く続いたスレッドほど重要な意思決定が入っているのが普通なので、「移らないもの」と「価値が高いもの」が重なりがちです。

「移す・残す・捨てる」を 3 つに割る
全部を移そうとするから決まりません。実際には3つに割れます。
移す:現在進行中の案件・チームのチャンネル。 移行後も同じメンバーが同じ話を続ける場所です。ここは会話が続く前提なので、過去ログの完全性より「明日から同じ場所で話せること」が優先されます。添付が抜けていても、必要なら元ファイルを共有ドライブに置き直せば済みます。
残す:法令・契約上の保存義務があるもの、係争になりうるもの。 これは移行先で読めるようにする話ではなく、証拠として原本のまま保全する話です。Google Chat 側にコピーが増えても保全にはなりません。Microsoft 側のテナントを一定期間残す、またはエクスポートして保管する、という別の手当てが要ります。退職者を含むメールの保持と e ディスカバリの考え方と同じ整理です。
捨てる:終了した案件の雑談チャンネル、告知専用チャンネル。 移行対象を絞るいちばん大きなレバーがここです。移行しない判断を明示的に下しておかないと、「念のため全部」に流れます。
この3分割を先にやると、移行ツールに流す量が体感で半分以下になります。 移行の所要時間もレポートを読む手間も、そこに比例します。
マッピングは移行作業ではなく、整理作業
チャンネルとスペースの対応付けは、作業としては表を1枚作るだけです。ただし中身は情報設計そのものです。
Teams のチャンネルは「チーム > チャンネル」の2階層で、部署やプロジェクトごとにチームが立ち、その下に用途別のチャンネルが並ぶのが典型です。Google Chat のスペースはフラットなので、この2階層を1階層に落とし込む必要があります。 機械的に全チャンネルを1スペースに変換すると、スペースが数百個並ぶことになります。
スペースが増えすぎると、どのスペースを見れば話が追えるのか分からなくなる状態になります。移行前に統合できるチャンネルは統合しておくほうが、移行後に整理するより明らかに安いです。移行を「そのまま運ぶ作業」だと思っていると、この工程が予定に入りません。
移行を決める前に確認すること
まず、Teams の各チャンネルの最終投稿日を出してください。 半年以上動いていないチャンネルが大半なら、移行対象は想像よりずっと少なくなります。ここを見ずに「3年分」と言っている間は、量が実態より大きく見えています。
次に、添付が抜けても成立する会話がどれくらいあるかを、実際に数チャンネル開いて確かめてください。 開発や制作のチャンネルは添付依存が高く、営業や総務の連絡チャンネルは低い傾向があります。この比率が「移す価値があるか」の答えそのものです。
なお、OneDrive のファイル移行が同じデータインポートで扱えるようになったので、ファイルとチャットを同じ計画に乗せられます。ただし添付ファイルは「Teams のチャットに貼られた OneDrive 上のファイル」であって、ファイル移行で Google ドライブに移ったあとも、チャットのメッセージから自動でリンクが張り直されるわけではありません。 両方を移しても、両者はつながりません。
Microsoft 365 から Google Workspace への移行判断、Chat スペースの設計、移行対象の切り分けについては、グリームハブの IT・Google Workspace 無料相談で承っています。チャンネル数と業務の性質によって取れる進め方が変わるため、個別にご相談ください。お問い合わせからどうぞ。
Sources
- Google Workspace Weekly Recap - August 28, 2026 — Google Workspace Updates
- オープンベータ版で利用可能: Microsoft Teams から Google Chat にメッセージを移行する — Google Workspace Updates JA
- チャットの移行で移行されるデータ — Google Workspace 管理者 ヘルプ
- チャットの移行を設定する — Google Workspace 管理者 ヘルプ
- チャットの移行を実行する — Google Workspace 管理者 ヘルプ
- Google Workspace の「データインポート」、Microsoft OneDrive と Teams にも対応 — HelenTech




