「公開したときが一番よかった気がします」。リニューアルから2年ほど経った会社を訪ねると、この言葉をよく聞きます。アクセスが落ちたわけでも、デザインが急に古くなったわけでもありません。ただ、載っている事業内容が今の主力と違っていたり、採用ページの募集職種が去年のままだったりします。
サイトは壊れて価値を失うのではなく、放置されて実態とずれていくことで価値を失います。それなのに多くの会社で、Webの予算は「3年か5年に一度、まとめて作り直す」形で組まれています。この立て方そのものが、公開日をピークにしてしまう構造を作っています。
公開日がピークになるのは、時間が確保されていないから
公開直後のサイトは、たいてい完成度が高い状態にあります。制作会社のディレクターが数か月かけて情報を整理し、担当者も原稿に向き合い、経営も内容を確認しています。組織として、サイトに向き合う時間が確保されているからです。
公開すると、その時間がゼロに戻ります。制作会社との定例はなくなり、担当者は本来の業務に戻ります。以降、サイトの更新は「気づいた人が、余裕のあるときに」という扱いになります。誰も悪くありませんが、この状態が2年続けば、載っている情報は2年分ずれます。
Smashing Magazine の Why Your Website Should Never Stop Changing は、この現象を「すべてのサイトは公開日にピークを迎え、そこから静かに漂流する。壊れるからではなく、誰にも最新に保つ時間がないから」と表現しています。国内の中小企業でも、起きていることは同じです。
一括リニューアルの予算が抱える問題
仮に、コーポレートサイトのリニューアルに200万円の予算を取ったとします。10〜15ページ程度の標準的な構成であれば、この規模の見積りになることは珍しくありません。金額そのものが不当なわけではありません。内訳の見方はホームページ制作の費用相場に整理しています。
問題は、そのあとに何も残らないことです。

一括型では、公開の瞬間に予算を使い切ります。翌月から次の予算取りまでの期間、手を入れる原資がありません。修正したい箇所が見つかっても、小さすぎて稟議に乗らないという状態が続きます。そして3年後、ずれが大きくなりすぎたところで「全面的に作り直すしかない」という結論になり、また一括の予算を取る。この繰り返しが、実は同じ内容を何度も作り直しているだけ、ということが起こります。
もうひとつの問題は、判断材料が増えないことです。3年に一度しか手を入れないと、どの変更が効いたのかを確かめる機会がありません。次のリニューアルでも、また勘で決めることになります。
総額を変えずに、配分を変える
現実的な提案は「継続改善のために予算を増やしてください」ではありません。多くの中小企業にとって、Web予算の総額は簡単には動きません。同じ総額の中で、配分を変えられないかという話です。
たとえば3年で200万円という枠を、次のように置き換えます。
| 配分 | 一括型 | 配分を変えた型 |
|---|---|---|
| 初期構築 | 200万円(公開時) | 130万円(公開時) |
| 公開後の改善 | なし | 月2万円 × 36か月=72万円 |
初期構築を130万円に抑えるということは、作る範囲を絞るということです。最初から全ページを完璧に作らず、事業の軸になるページと、問い合わせまでの導線を確実に作る。事例や採用のように中身が育っていくページは、枠だけ用意して、公開後に埋めていきます。
この形が効くのは、公開後に「小さく直す原資がある」状態を維持できるからです。月2万円では大きな開発はできませんが、文言の修正、事例の追加、フォームの項目の見直しといった作業には足ります。そしてこの種の小さい修正が、問い合わせ数にはいちばん効きます。
リニューアルそのものの進め方はコーポレートサイトのリニューアルガイドにまとめています。
公開後の予算で、実際に何をするのか
「継続改善」と言うと曖昧に聞こえるので、具体的に挙げます。優先順位の高いものから並べています。
- 問い合わせフォームの手前を直す。 どのページから問い合わせに至っているか、どこで離脱しているかを見て、導線を1本ずつ直します。ページを作り足すより効果が出るのが早い作業です
- 事例と実績を足す。 新規の受注が決まるたびに1本ずつ追加します。公開時点で事例が3本しかないサイトも、2年あれば20本を超えます。これは一括のリニューアルでは絶対に作れない資産です
- 古い情報を消す。 終了したサービス、退任した役員、去年の採用情報。足すより消すほうが、信頼にはよく効きます
- 検索で来ている語に合わせる。 実際に検索されている語と、サイトで使っている語がずれていることがよくあります。四半期に一度見直せば十分です
この4つは、どれも数時間から数日で終わる作業です。だからこそ、一括の予算の中では後回しにされ、独立した予算がなければ永久に着手されません。
それでも一括で作り直したほうが早いケース
配分を変えるやり方が常に正解というわけではありません。次のいずれかに当たるなら、素直に一括のリニューアルを検討してください。
土台が古すぎて、部分的に直せない場合。 スマートフォンで崩れる、CMS のバージョンが古くて更新できない、といった状態では、小さな修正の単価が跳ね上がります。土台を入れ替えるほうが安くつきます。判断の目安はリニューアルのタイミングに整理しています。
事業の中身が変わった場合。 主力事業やターゲットが変わったなら、情報の並べ方から作り直す必要があります。これは改善では届きません。
引き継げる人がいない場合。 前の制作会社と連絡が取れない、ソースがどこにあるか分からない、という状態では、まず状況を把握するだけで費用がかかります。引き継ぎと保守の進め方にあるとおり、調査だけで数十万円かかることもあります。
次にやること
自社のサイトで、直近12か月に更新した箇所を数えてみてください。 事例の追加、文言の修正、なんでも構いません。ゼロか1〜2件であれば、今の予算の組み方では公開後に手を入れられない構造になっています。
次のリニューアルの見積りを取るときに、「初期構築を絞って、公開後の改善に月次の枠を残す形でも組めますか」と聞いてみてください。制作会社によって得意不得意が分かれるので、この質問への答え方自体が、選定の判断材料になります。
サイトのリニューアル計画、公開後の改善を前提とした予算配分、既存サイトの状態確認については、グリームハブのHP制作・リニューアル相談で承っています。現在のサイトの状態と事業の方向によって最適な組み方が変わるため、お問い合わせからご相談ください。









