「バックアップは取っています」と答えられても、「そのバックアップは、本番と別の場所にありますか」と聞かれると、すぐには答えられないことがあります。同じ事業者の、同じ地域の、隣の建物に置かれている場合もあるからです。
2026年9月15日、AWSは障害情報ページ(AWS Health Dashboard)の更新で、中東の一部について、その範囲にだけ置かれていたデータやリソースへのアクセスを復旧できないと発表しました。対象はバーレーンリージョンの全域と、UAEリージョンにある3つの可用性ゾーンのうち1つ(mec1-az2)です。
半年かけて、戻らないと判断された
発端は2026年3月に中東で起きたドローンによる攻撃です。AWSの説明では、UAEでは2つの施設が直撃を受け、バーレーンでは施設の近くへの攻撃で設備に物理的な被害が出ました。構造の破損や電力供給の途絶に加え、消火活動による水の被害もあったとしています。約半年の復旧作業を経て、一部については復旧できないという結論が出た形です。
AWSによると、バーレーンでは被害が複数の可用性ゾーンに及び、リージョンや複数ゾーンにまたがるサービスが設計上想定していた耐性を超えました。3月に1つ目のゾーンが被害を受けた時点で他のリージョンへの移行を勧め、多くの利用者は、4月に2つ目のゾーンが停止してリージョン全体が使えなくなる前に移行を済ませていたとしています。UAEについては、他の2つのゾーンとリージョン単位の資源の復旧を続けているとしています。両リージョンの関連する課金処理は、4月30日の更新で停止が案内されていました。
重いのは、戻らないとされたのが「その範囲だけに置かれていた」データとリソースだという線引きです。別の地域やゾーンにもコピーを持っていたかどうかが、そのまま結果の差になります。
「複数のゾーンに分けてある」が守る範囲
クラウドの構成を説明するとき、複数の可用性ゾーンに分散していれば安全、という話し方をよくします。これは、1つのゾーン(1つ以上のデータセンターの集まり)が使えなくなる程度の障害を想定した設計で、その範囲では確かに有効です。
今回の事例が示したのは、その想定の外側があることです。地域全体が同時に使えなくなる事態まで含めるなら、別の地域にコピーを持つか、事業者そのものを分けるかのどちらかになります。どこまで備えるかは、止まったときに事業がどれだけ困るかで決める話で、技術だけで決まる話ではありません。

止まる前提での作り方は外部サービスが止まったときの見せ方でも扱っています。
確認するのは3つだけ
構成図を描き直す前に、次の3つを調べます。どれも、いまの設定と記録を見れば確かめられます。
| 確認すること | 見る場所 |
|---|---|
| 本番のデータが物理的にどの地域にあるか | 契約しているサービスの設定画面。地域の表示 |
| バックアップが別の地域にあるか | 保管先の設定。本番と同じ地域なら、同時に失われることがある |
| 実際に戻せるか | 直近で復元を試した記録。成功通知は復元できた証拠にならない |
3つ目は確認が抜けやすく、それでいて被害が出たときにいちばん効く項目です。処理が成功したことと、そこから業務を再開できることは別だという話はバックアップの復元性を段階で測るで整理しています。
SaaSに預けているデータも同じ対象です。事業者側で保持される範囲と、自社で持ち出しておくべき範囲は分けて考えます。Google Workspaceを例にした整理は預けたデータをどこまで自社で守るかにあります。
委託先に聞く2つの質問
運用を外部に任せている場合、上の3つは自社では調べきれないことがあります。そのときに投げる質問は2つで足ります。
ひとつは「バックアップの保管先は、本番と同じ地域か別の地域か」。もうひとつは「直近で復元を試したのはいつで、どこまで戻せたか」です。どちらも答えが出てこないなら、契約の範囲に復元の確認が入っていない可能性があります。
保守の範囲は契約書に書かれた内容で決まるので、口頭での安心の確認より、次の更新時に何を足すかの話に変えたほうが早く進みます。
全部を二重にしない
すべてのシステムを別の地域に複製すれば費用は倍に近づきます。現実的なのは、止まった時間だけ困るものと、データが消えたら業務が続かないものを分けることです。
社内の共有ファイルや会計のデータのように、失うと復旧のしようがないものだけを別の地域に置く。処理そのものは止まっても、あとから立て直せるなら優先度を下げる。この区別を先に付けておけば、備える範囲を広げるかどうかは予算の判断として扱えます。
2026年9月24日に、AWS Health Dashboardのバーレーン・UAEリージョンの公開情報(3月、4月30日、9月15日の更新)と、可用性ゾーンとリージョンの設計に関するAWSの公式資料を確認しました。対象アカウントでの影響範囲は確認していません。自社への影響を判断する際は、契約している事業者からの通知と公式情報を確認してください。
クラウド構成の見直しや、復旧手順の確認の相談は、グリームハブへご相談ください。









