「Webアクセシビリティが義務化」は半分誤解 — 発注者が本当にやること | GH Media
URLがコピーされました

「Webアクセシビリティが義務化」は半分誤解 — 発注者が本当にやること

URLがコピーされました
「Webアクセシビリティが義務化」は半分誤解 — 発注者が本当にやること

「取引しているWeb制作会社から『2024年にWebアクセシビリティが義務化されたので、対応しないと法律違反になります』と言われ、サイト全面改修で百万円単位の見積もりが来ました。やらないと本当にまずいのか、それとも売り込みなのか、判断がつかなくて」——小売業を営む会社の経営者の方から、こんな相談を受けました。「義務化」「法律違反」という言葉が並ぶと、内容を確かめないまま高い契約に踏み切ってしまいがちです。

先に結論を言うと、この「義務化されたので対応しないと違法」という説明は正確ではありません。法律が事業者に義務づけたのは別のことで、Webアクセシビリティそのものは罰則を伴う義務ではないのです。とはいえ「だから何もしなくていい」でもありません。本記事では、2024年の法改正が実際に何を求めているのかを整理したうえで、中小企業の発注者が過剰な出費を避けながら押さえるべきことを、優先順位をつけて説明します。

「義務化」の正確な中身 — 何が義務で、何が努力義務か

出発点になっているのは、2024年4月1日に施行された改正障害者差別解消法です。この改正で、民間の事業者にも 合理的配慮の提供 が義務づけられました。ここは事実で、対象は一部の大企業ではなく、すべての事業者です。

ただし、ここが誤解されやすいところです。義務になったのは「合理的配慮の提供」であって、「Webサイトをアクセシブルにすること」そのものではありません。合理的配慮とは、障害のある人から何らかの申し出があったときに、過重な負担にならない範囲で対応することを指します。一方、Webサイトを誰でも使える状態に整えておくことは、法律上は 環境の整備 に位置づけられ、こちらは努力義務です。つまり、Webアクセシビリティに対応できていなくても、それ自体で罰則を科されることはありません。

よく聞く説明実際のところ
Webアクセシビリティが義務化された義務化されたのは「合理的配慮の提供」。Web対応は環境整備(努力義務)
対応しないと法律違反・罰則があるWebアクセシビリティ未対応それ自体への罰則はない
すべてのページを完璧に直す必要がある求められるのは過重な負担のない範囲での対応

達成基準の目安としては、日本ではJIS X 8341-3、国際的にはWCAGというガイドラインが参照されます。ただしこれらは「守らないと違法になる法律」ではなく、対応の到達点を測る物差しです。この区別を持っておくだけで、「義務化=全面改修必須」という早合点を避けられます。

だから発注者がやるべきは「全対応」ではなく「優先順位」

法律が全面改修を求めていない以上、発注側の正しい問いは「対応するかしないか」ではなく「どこから、どこまでやるか」です。限られた予算で効果の高いところから手をつけるのが、費用対効果の面でも理にかなっています。

優先度が高いのは、多くの利用者が実際に困る箇所です。文字と背景の色のコントラストが弱くて読みにくい、画像に代替テキストがなく音声読み上げで内容が伝わらない、フォームのラベルが不明瞭で入力できない、といった点は、対応の手間が比較的軽い割に効果が大きい。逆に、動画への字幕付与やサイト全体の抜本的な作り替えはコストが重く、まず着手すべき箇所ではありません。ここで大切なのは、これらの多くは「障害のある人のため」だけでなく、高齢の顧客やスマートフォンの小さな画面で見る一般の利用者にとっても使いやすさに直結する、という点です。アクセシビリティ対応は、実は幅広い顧客の取りこぼしを防ぐ施策でもあります。

弊社が支援したある地域密着の小売店では、通販サイトの申込フォームで入力を途中でやめてしまう人が多いのが悩みでした。全面改修を検討していましたが、実際に手を入れたのは、入力欄のラベルを分かりやすくし、エラー表示を目立たせ、文字と背景のコントラストを上げる、といった軽い修正だけです。費用は当初の全面改修見積もりのごく一部で済み、それでも申込の途中離脱は目に見えて減りました。高齢の顧客が多い商圏だったため、「障害のある人向けの配慮」が結果的に主要顧客層の使いやすさを押し上げたわけです。使い勝手の改善が成果につながる考え方はリニューアルで失敗しないための記事でも触れています。

「対応しないと違法」という見積もりを見抜く

冒頭の相談のように、「義務化されたから全面改修が必要」という理屈で大きな見積もりが出てきたら、一度立ち止まってください。前述のとおり、Webアクセシビリティ未対応それ自体は違法ではありません。制作会社が法的な義務を根拠に全面改修を迫ってくる場合、その前提が正確でない可能性があります。

まともな制作会社であれば、「法律上は努力義務だが、御社の顧客層を考えるとこの箇所は対応する価値がある」といった具体的な優先順位を示してくれます。逆に、「義務化されたので」という一言で全面改修に持っていこうとするなら、その根拠と、対応しなかった場合の実際のリスクを尋ねてみるとよいでしょう。判断の軸は「法律で強制されているか」ではなく「自社の顧客にとって実利があるか」です。過剰な提案を見抜く姿勢そのものは、レガシーサイトの保守記事で扱った「変化を口実にした過剰な提案」を見抜く視点と同じです。

リニューアルや新規制作の機会に組み込むのが最も効率的

とはいえ、アクセシビリティを軽視してよいわけではありません。もっとも効率がよいのは、既存サイトを慌てて直すのではなく、次にサイトを作り替えるタイミングで最初から組み込むことです。制作の初期段階で色のコントラストや文字サイズ、フォームの作りを配慮しておけば、後から改修するより大幅に安く済みます。新規制作やリニューアルを予定しているなら、要件のなかに「基本的なアクセシビリティ配慮」を最初から入れておくのが賢い進め方です。制作費用全体の考え方はホームページ制作の費用相場の記事にまとめています。

「制作会社の『義務化』という説明が正しいのか確かめたい」「限られた予算で、どこから対応すべきか優先順位をつけたい」「リニューアルにあわせてアクセシビリティも整えたい」——そうしたお悩みがあれば、グリームハブのWeb制作・リニューアル相談からお気軽にお問い合わせください。法的に求められる範囲と、自社の顧客に効く対応を切り分けて、過不足のない進め方をご一緒に設計します。

Sources

無料ダウンロード

Web制作 費用・発注・集客 完全ガイド【2026年版】

費用相場・制作会社の選び方・集客戦略まで、中小企業のWeb担当者が知っておくべき全知識をPDFにまとめました。

メルマガにも登録されます。いつでも解除可能です。

URLがコピーされました

グリームハブ株式会社は、変化の激しい時代において、アイデアを形にし、人がもっと自由に、もっと創造的に生きられる世界を目指しています。

記事を書いた人

鈴木 翔

鈴木 翔

技術の可能性に魅了され、学生時代からプログラミングとデジタルアートの分野に深い関心を持つ

関連記事

「WEB」の記事一覧を見る