「AIでこれだけ開発が楽になるなら、うちも外注をやめて内製に切り替えたほうがいいのでは、と社内で話が出ています。ただ、そもそもエンジニアを採れていないので、内製と言っても誰がやるのか、という問題は残っていて」——数十名規模の会社で新しい業務システムを検討している経営者から、こんな相談を受けました。AIの進歩で「開発は小さなチームで回せる」という話が広がるなか、中小企業ほど「じゃあ内製すべきなのか」という問いに直面しています。
調査会社のガートナーは2026年7月、2029年までに60%の組織が「より小さな開発チーム」を本格的に導入するだろうと予測しました(2026年時点では15%)。人とAIそれぞれの強みを活かすためのチーム再編です。この流れは、中小企業の「内製か外注か」という判断を確実に揺らします。本記事では、この予測を自社の意思決定にどう落とすかを整理します。
「小さなチーム」とは何を意味するのか
ガートナーの言う「小さなチーム」は、単に人数が少ないという話ではありません。従来は「設計する人」「作る人」「テストする人」と役割が分かれていた開発を、少人数のメンバーがAIの支援を受けながら、業務理解から設計、AIエージェントの監督までを横断的に担う形へと組み替える、という意味です。今日でも4〜5人、少ないと2〜3人という規模が現れており、これが広がっていくという見立てです。
ここから中小企業が読み取るべきは、「少人数でも、以前より広い範囲の開発が回せるようになった」という事実です。かつては専任のチームを抱えないと難しかった領域に、少人数+AIで手が届き始めています。AIエージェントを業務にどう組み込むかの全体像はAIエージェント業務活用の記事で扱っています。ノーコードやAIで内製の裾野が広がる流れはAIエージェント時代の内製の記事も参考になります。
ただし「採用と育成」の壁は消えていない
一方で、見落としてはいけない釘が、同じ予測の中に刺さっています。ガートナーは、この流れを「若手採用を削る口実にするな」と明確に警告しています。AIで若手の役割を減らせると考えて採用を絞った組織は、2028年までに自社の人材パイプラインを痩せ細らせる、というのです。知識の継承が途絶え、内部で人が育たず、結果として高価で希少なベテランしか採れなくなる——これは中小企業にこそ重く響きます。
つまり、「AIで小さなチームで回せる」は「人がいらない」ではありません。小さくても、その少人数を採用し、育て、AIを使いこなせる状態に保つ必要がある。冒頭の経営者の「誰がやるのか」という問いは、まさに核心を突いています。AIは開発の一部を肩代わりしますが、それを操る人材の採用と育成までは肩代わりしません。
中小企業の「内製 vs 外注」を選び直す
この二つ——「少人数でも回せる」と「採用・育成の壁は残る」——を踏まえると、中小企業の選択肢は単純な二択ではなくなります。
| 選び方 | 向いている状況 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 内製に寄せる | 継続的に手を入れるシステムが中核事業にあり、人を採り育てる余力がある | 採用・育成・退職リスクを自社で抱える。属人化に注意 |
| 外注に寄せる | 専任を抱えるほどの開発量はないが、質は落とせない | 丸投げは中身がブラックボックス化しやすい |
| 伴走型(併用) | 内製化したいが、いきなり全部は無理 | どこまで自社で、どこから外部かの線引きを明確に |
現実的に多くの中小企業に合うのは、三行目の「伴走型」です。全部を自社で抱えるのでも、全部を丸投げするのでもなく、外部の力を借りながら、自社でも扱える状態を少しずつ作っていく。AIで小さなチームが回る時代は、この「伴走してもらいながら内製の足腰を作る」やり方と、実は相性が良いのです。内製と外注の線引きの考え方は内製と外注の判断の記事でも扱っています。
事例: 「全部内製」を諦めて伸びた会社
具体例を挙げます。冒頭の経営者の会社(社名は伏せます)は、当初「AIがあるなら全部内製に切り替える」方針に傾いていました。ですが、エンジニアの採用に苦戦している現実を踏まえ、方針を組み替えました。
やったのは、内製と外注の線を引き直すことです。日々の細かい改修や運用は、AIの支援を受けながら社内の担当者が回せるようにし、そのための土台づくりと難所は外部と伴走する形にしました。ポイントは、外注部分を「丸投げのブラックボックス」にせず、社内の担当者が中身を把握できる状態で引き継いだことです。効いたのは「全部を自前で」という理想を一度手放したことでした。採れない人材を前提に計画を立てず、いまの体制で回る線引きにしたことで、システムは前に進み、社内にも少しずつノウハウが溜まりました。丸投げにしないための保守・運用の考え方は保守・運用契約で発注者が見るべき点の記事も参考になります。
まず「自社で回せる線」を見極める
開発チームが小さくなる流れは、中小企業にとって追い風です。少人数でも、以前より広い範囲のシステムを手の内に入れられるようになりました。ですが、それは「人がいらなくなる」ことでも「全部内製すべき」ことでもありません。大事なのは、採用と育成の現実を直視したうえで、自社で回せる線をどこに引くかを見極めることです。
内製化を進めたいが人を採れず悩んでいる、外注に頼りきりで中身がブラックボックスになっている、AIを活かして少人数でも回る体制を作りたい——そうしたお悩みがあれば、グリームハブのシステム開発・内製化支援の無料相談からお気軽にご相談ください。内製と外注の線引きから、社内で扱える形での引き継ぎ、AIを前提にした体制づくりまで、御社の人員と事業にあわせてご一緒します。