「Wix Studio で作りましょう、と制作会社から提案されたのですが、これは日本のSTUDIOのことですよね?」——先日そのまま聞かれました。違います。名前は似ていますが、別の会社の別の製品です。
さらにややこしいのが、Wix と Wix Studio の関係です。同じ Wix 社の製品なので「上位版に切り替えるだけ」と受け取られがちですが、編集画面そのものが別物です。ここを取り違えたまま発注すると、公開後に「自社で直せない」「別の会社に引き継げない」という形で必ず表面化します。
3つを一度並べて整理する
まず、何がどう違うのかを1回だけ整理します。
| 提供元 | 主な想定ユーザー | 位置づけ | |
|---|---|---|---|
| Wix | Wix(イスラエル) | 自分でサイトを作る事業者 | 汎用のサイトビルダー。テンプレートから自分で組む |
| Wix Studio | Wix(イスラエル) | 制作会社・フリーランス・大規模サイト | プロ向けの制作環境。同じWixインフラ上で動く |
| STUDIO | STUDIO(日本) | デザイナー・制作会社 | 日本発のノーコード制作ツール。Wixとは無関係 |
STUDIO は Wix と資本関係も技術的な関係もありません。 日本語のサポートや国内の導入事例を期待して STUDIO を選んだつもりが、契約書には Wix Studio と書かれていた——という取り違えは、実際に起こり得ます。提案を受けたら、まず表記を確認してください。「Wix Studio」と「STUDIO」は、間にスペースがあるかないかで区別されています。
Wix と Wix Studio は「同じものの上位版」ではない
同じ会社の製品なので、こちらのほうが誤解が根深くなります。
Wix Studio は、制作会社・フリーランス・大規模サイトを想定した制作環境です。ピクセル単位での調整、レスポンシブの自動調整、複雑なアニメーションやページ遷移、Figma からのデザイン取り込みといった、作り込みを前提とした道具が揃っています。裏側のインフラや商用機能は Wix と共通です。
問題は、編集画面(エディタ)が別だという点です。Wix の管理画面に慣れた担当者が、Wix Studio で作られたサイトを開いても、同じようには編集できません。「Wixだから自分たちで更新できます」という説明を、Wix Studio 製のサイトにそのまま当てはめると齟齬が出ます。
もう一つ、既存の Wix サイトを Wix Studio へワンクリックで移せるわけではありません。中身の作り直しが前提になります。「いま Wix で作ってあるので、あとで Wix Studio に上げればいい」という前提で初期の予算を組むと、その「あとで」が実質的な再制作になります。
料金の考え方も分けて理解しておく必要があります。Wix の一般向け有料プランは、無料プランに加えて Light / Core / Business / Business Elite といった段階があり、独自ドメインの取得は有料プランに含まれる一方、オンライン決済を使うにはビジネス系のプラン以上が必要です。「安いプランで始めて、あとで決済を足す」という進め方は、プラン変更を伴います。Wix Studio 側は制作会社向けの提供形態が別に用意されており、発注者が直接契約するとは限りません。誰の名義で何を契約するのかは、見積もり段階で確認すべき項目です。

発注前に確認する3つの質問
道具の優劣を比べる前に、発注者として決めておくべきことがあります。ツールが決まってから聞くと、答えが「もう決まっているので」になりがちです。
1. 公開後、誰が何を更新するのか。
「お知らせの本文だけ差し替えたい」のか、「新しいページを1枚追加したい」のか、「レイアウトから変えたい」のかで、必要な道具が変わります。前者2つが中心なら Wix でも十分成立します。デザインの作り込みが要件の中心にあるなら Wix Studio 側の話になりますが、そのぶん自社で触れる範囲は狭くなります。
2. 制作会社を変えることになったら、引き継げるのか。
これは道具に関係なく必ず聞くべき質問ですが、Wix Studio のように制作会社向けの提供形態を持つ製品では特に重要です。アカウントの持ち主が誰なのか、サイトの所有権をどう移すのか、移す手順は文書化されているのか。契約書に書いていなければ、書いてもらってください。
3. 将来 WordPress など別の基盤に移す可能性があるか。
Wix も Wix Studio も STUDIO も、作ったページをそのまま他所へ持ち出せる形式にはなっていません。移行は原則として作り直しです。3年後に自社でCMSを運用したい構想があるなら、その構想を最初に伝えたうえで選定してもらう必要があります。伝えなければ、目の前の要件だけで最適化されます。
ツールごとの機能比較そのものはノーコードWebサイトビルダー比較 — STUDIO・Wix・WordPressでホームページを作るに、Wix と WordPress のどちらで作るかという判断軸はWix と WordPress、結局どちらで作るべきかに整理しています。費用感の目安はホームページ制作費用ガイドを参照してください。
「更新できる体制」まで含めて決める
取り違えが痛いのは、名前を間違えたこと自体ではありません。名前で判断したせいで、更新体制と引き継ぎの話が抜け落ちることです。
実務でよく見るのは、「ノーコードだから自社で更新できます」という説明を受けて発注したが、公開後に触ってみたら想定と違った、というケースです。触れるのは事実でも、どこまで触ってよいかは作り方に依存します。デザインを作り込むほど、うかつに触ると崩れる箇所が増えます。
ここを事前にすり合わせる方法は単純で、契約前に、実際に更新する担当者が編集画面を触る時間を1回設けてもらうことです。デモでもテスト環境でも構いません。触ってみて「これなら無理」と分かったなら、更新を制作会社に任せる前提で保守の見積もりを取り直せばいい。公開後に気づくより、はるかに安く済みます。
作った後に自社で直せない状態をどう避けるかは作った後、自社で直せないホームページ — 発注前に決める「更新できる体制」の作り方にも詳しくまとめています。
発注前にやること
提案書を開いて、ツール名の表記を確認してください。「Wix Studio」なのか「STUDIO」なのか。同じ提案書の中で表記が揺れていたら、その場で確認する価値があります。
そのうえで、更新を担当する予定の人の名前を1人決めて、その人が編集画面を触る機会を契約前に設けてもらう。ツールの選定は、その反応を見てからで間に合います。
ホームページの制作・リニューアルを、公開後の更新体制まで含めて設計したい——グリームハブでは要件に応じた個別のお見積りを承っています。お問い合わせからご相談ください。