「会議室を増やしてほしい」という要望が総務に上がってくる。カレンダーを見ると確かに終日埋まっている。ところが実際に各階を回ってみると、埋まっているはずの部屋の半分は無人。この落差に気づいた時点で、問題は会議室の数ではなくなっています。
Google カレンダーのリソース(会議室・社用車・貸出機材)は、登録すればすぐ使い始められる手軽さがあります。その手軽さのまま3年ほど運用すると、誰も使っていない予約と、誰も使っていないリソースが混ざった状態になります。この状態では、実際の稼働率が読めないので増設の判断もできません。
埋まって見える予約は、4つの経路から生まれる
無人の会議室予約は、単なる予約忘れだけでは説明がつきません。実務で見つかるのは、だいたい次の4つです。
1つめは、退職者・異動者が主催していた定期予定です。週次定例を主催していた人が抜けても、定期予定はカレンダー上で回り続けます。会議自体はとっくに終わっているのに、会議室だけが毎週押さえられます。これが最も長期にわたって枠を食います。
2つめは、参加者が全員辞退した予定です。主催者以外の全員が「不参加」を返しても、予定そのものは消えません。会議室も押さえられたままです。実質的に開催されない会議が、カレンダー上は成立しています。
3つめは、保険としての多重予約です。「大きい部屋が取れるか分からないから、小さい部屋も押さえておく」という行動は、その人にとっては合理的です。ただし片方を解放する動機は誰にもないので、そのまま残ります。
4つめは、オンライン化した会議の残骸です。リモート併用に切り替えたあと、Meet だけで完結するようになった会議の予定に、会議室が付いたままになっているパターンです。参加者は誰も出社していません。

Google 側に用意されている解放の仕組み
ここまでを人の善意で運用すると、必ず抜けます。Google Workspace 側には、放置された予約を機械的に片付けるための設定がいくつか用意されています。少なくとも次の2つは、有効になっているかを確認する価値があります。
参加者が1名になったときの自動キャンセルは、上の2つめ(全員辞退)に直接効きます。主催者だけが残った予定から会議室を自動的に外す挙動で、管理コンソール側で有効にできます。辞退の運用が定着している組織ほど回収量が大きくなります。
使用できない会議室の自動置き換えは、予約が競合したときに同等のリソースへ振り替える機能です。ゴースト予約そのものを消す機能ではありませんが、「押さえられていて取れない」という体験を減らすので、保険としての多重予約(3つめ)の動機を弱める側面があります。
一方で、1つめ(退職者の定期予定)は自動では消えません。アカウントを削除しても、その人が主催していた予定と、そこに紐づいたリソース予約の扱いは自動では整理されません。退職処理のチェックリストに「主催している定期予定の棚卸し」が入っていない組織では、これが毎年積み上がります。
棚卸しの手順
年に一度、次の順で見ると実態が出ます。半日あれば終わります。
- リソース一覧を出し、実在しない部屋・処分した機材が残っていないかを見る。移転やレイアウト変更のあと、消し忘れたリソースが残っていることがあります。これが「予約できるのに実体がない」という最悪のパターンです
- 各リソースのカレンダーを直近3か月ぶんスクロールし、定期予定を洗い出す。単発の予約より、定期予定のほうが枠を食っています
- 定期予定の主催者が在籍しているかを確認する。退職・異動していれば、その予定は候補です
- 残った定期予定について、主催者に「まだ使っていますか」と聞く。この1往復だけは自動化できません。ただし聞く相手は数人に絞れているはずです
- 回収できた枠を差し引いたうえで、稼働率を出し直す。ここで初めて「増設が要るのか」の判断ができます
3で退職者の予定が大量に出てきた場合は、リソース側ではなく退職処理の手順を直したほうが再発しません。
予約ルールを設定に落とす
棚卸しをしても、ルールが変わらなければ1年で元に戻ります。設定で担保できるものは設定に寄せます。
| 起きている問題 | 設定で寄せられるところ |
|---|---|
| 名前が似ていて取り違える | ビル・フロア・キャパシティを含む命名規則に統一する |
| 大人数の会議に小さい部屋が取られる | リソースに定員を登録し、選択時に見えるようにする |
| 特定の部屋(役員室・応接)が勝手に押さえられる | 自動承認を切り、承認制にする |
| 備品の有無で部屋を選べない | 「機能」としてモニター・Meet ハードウェアを登録する |
このうち効果が大きいのは承認制です。すべての部屋を承認制にすると運用が回らなくなるので、対象は応接室・役員会議室のように「誰が使うかを把握しておきたい部屋」に絞ります。承認者が不在のときに止まらないよう、承認できる人を複数置いておくのが前提になります。
命名規則は地味ですが、リソースの数が20を超えたあたりから効いてきます。ビル名・フロア・部屋名・定員が名前から読めるようにしておくと、予約画面で迷う時間がなくなります。登録の順序を管理コンソール側で揃えておけば、一覧の並びもそのまま意味を持ちます。管理コンソール上でどこにビルとリソースの管理画面があるかは、Google Workspace 管理コンソール入門で場所を確認してください。
見落としやすい2つの点
外部の人が会議室を押さえられるかどうかは、別の話です。社外の常駐メンバーや、Outlook を使っている取引先が自社の会議室を予約する必要があるなら、リソースの設定だけでは足りません。この経路はGoogle カレンダーのリソースを Outlook から直接予約で扱っている仕組みが担当します。棚卸しと同時に検討すると二度手間になりません。
リソースカレンダーは、予定の中身が見える場所でもあります。会議室を押さえると、そのリソースのカレンダーを閲覧できる人の側に予定が現れます。機密性の高い打ち合わせで共有リソースを使う運用があるなら、どこまで見えているかを一度確認してください。カレンダー全体の見え方の決まり方はGoogleカレンダーの「非公開」は、誰に何が見えているのかに整理しています。
次にやること
増設の見積もりを取る前に、退職者が主催している定期予定が何件残っているかだけを数えてください。この1つの数字で、会議室が足りないのか、カレンダーが汚れているだけなのかがだいたい判断できます。
数えた結果が二桁になるなら、まず退職処理の手順にリソース予約の棚卸しを組み込むほうが、部屋を増やすより費用対効果が高くなります。
リソース設計の見直しや、退職・異動時のアカウント処理を含めた運用手順の整備については、グリームハブのIT・Google Workspace 無料相談で承っています。拠点数や働き方によって適切な設計は変わるため、個別にご相談ください。お問い合わせからどうぞ。