役員のスケジュールを秘書や管理部門が代わりに組む会社では、Googleカレンダーの権限設定でほぼ必ず同じところで詰まります。代理で予定を入れられるようにすると、非公開にした予定の中身まで見えてしまうのです。
通院の予約、家族の行事、まだ社内に出せない採用面談。こうした予定を「非公開」にしても、カレンダーに「予定の変更権限」を持っている相手には詳細が見えます。かといって権限を「予約可能な時間帯のみ表示」まで絞ると、代理で予定を入れられなくなり、二重予約が起きます。多くの会社が「秘書は信頼しているから」で片付けてきた妥協点でした。
2026年7月から、この二択に三つ目の選択肢が入りました。
これまでの4段階では、非公開と代理操作が両立しなかった
Googleカレンダーの共有権限は、これまで大きく4段階でした。下から順に、予約可能な時間帯のみ表示(空き時間だけが分かる)、すべての予定の詳細を表示、予定の変更権限、予定の変更および共有の管理権限です。
問題は3段目から上の扱いです。「予定の変更権限」以上を渡した相手には、非公開に設定した予定の詳細も見えます。 予定を編集できるなら中身も見えて当然という設計で、単体では筋が通っています。ただ現場の要求は「編集はさせたい、中身は一部だけ隠したい」という混ざったものなので、そこに当てはまる段が存在しませんでした。
結果としてよく取られていたのが、次の二つの回避策です。ひとつは、私的な予定だけ別のカレンダー(個人アカウントなど)に置いて、共有対象から外す方法。ふたつめは、予定のタイトルを「予定あり」「外出」などに書き換えて中身を伏せる方法。どちらも動きますが、前者はカレンダーが2枚に分かれて空き時間の判定が狂いやすく、後者は本人が毎回手で伏せる運用になります。
新しい権限は「編集はできる、非公開の中身は見えない」
2026年7月7日から順次提供が始まったのが、「変更権限(非公開の予定は空き時間として表示)」 に相当する新しい共有権限レベルです(原文の表記は “Make changes (see private events as free/busy)”)。Rapid Release / Scheduled Release の両ドメインにロールアウトされています(New calendar sharing permission level and changes to recurring event visibility — Google Workspace Updates)。
この権限を渡された相手からは、カレンダーがこう見えます。
- 非公開でない予定は、これまでの「変更権限」と同じように作成・編集・削除ができる
- 非公開の予定は「予定あり」のブロックとしてだけ表示される。 タイトルも参加者も場所も見えない
- 非公開の予定は編集も日時変更もできない
- 非公開の予定は、代理側の検索結果に一切出てこない
最後の一点は地味ですが実務では効きます。詳細が非表示でも検索でタイトルが引っかかれば意味がないので、検索からも外れる設計になっているのは筋が通っています。
権限を渡すのはカレンダーの持ち主本人です。管理者が一括で付け替えるものではなく、カレンダーの設定画面で共有相手ごとにこの権限レベルを選びます。

効くのは秘書運用だけではない
いちばん分かりやすいのは役員と秘書の関係ですが、同じ形の困りごとは他にもあります。
部門長のカレンダーを庶務が管理しているケース。 会議の設定は任せたいが、人事評価の面談や労務相談の予定は伏せたい。従来は面談を別カレンダーに逃していた運用が、1枚のまま整理できます。
士業や医療のように、予定名そのものが機密になる職種。 顧客名や患者名が予定のタイトルに入る業務では、代理入力を許す時点で情報が広がっていました。非公開にした予定だけ確実に閉じられるなら、代理入力の範囲を広げやすくなります。
兼務が多い小さな組織。 一人が複数部門を見ていると、部門をまたいだ予定が1枚のカレンダーに混ざります。全部見せるか何も見せないかの二択では、結局「見せる」に倒れていました。
なお、代理という言葉はGmail側の「代理人」とは別の仕組みです。メールの代理受信・代理送信を含めた共有受信箱の設計はGmailの代理アクセスと共有メールボックスで扱っています。カレンダーとメールで別々に権限を設計する必要があるという点は、最初に押さえておくと混乱が減ります。
情シスが先にやっておくこと
この機能自体はエンドユーザーの設定ですが、放っておくと使われません。実際に効かせるには、管理側で3つ準備しておくと早いです。
ひとつ、組織のカレンダー外部共有設定を確認する。管理コンソール側で共有できる範囲が絞られていると、そもそも権限を渡す相手が選べません。社内向けの共有が「予約可能な時間帯のみ」に制限されていないかを見ます。
ふたつ、「非公開」の使い方を先に決めて周知する。この権限は「非公開に設定された予定」を隠す仕組みなので、本人が非公開にしていない予定は普通に見えます。つまり機能を入れただけでは何も守られません。「私的な予定と、社内に出せない予定は非公開にする」という運用ルールが先です。
みっつ、既存の共有設定を棚卸しする。既に「予定の変更および共有の管理権限」を渡している相手は、この新しい権限に落とすべきかを検討対象にします。権限の与えすぎを減らす作業そのものは、管理者権限の委任と最小権限で扱った考え方がそのまま当てはまります。カレンダーも同じで、必要な操作に足りる最小の段を選ぶのが基本です。
落とし穴になりそうな点
いくつか、先に知っておくと事故が減る箇所があります。
代理側が「予定あり」を動かせないことによる詰まり。 非公開の予定は編集できないので、その時間をどうしてもずらしたい場合は本人に依頼する運びになります。従来は代理側で完結していた調整に一往復増えます。運用としては正しい姿ですが、切り替え直後は「なぜ動かせないのか」という問い合わせが来ます。
会議室などのリソース予約は別系統。 カレンダーの共有権限とリソース(会議室・備品)の予約権限は別に設計されています。リソース側の考え方はサードパーティカレンダーとリソース予約を参照してください。
同じ告知に定期予定の表示に関する変更が含まれている。 権限レベルの追加とあわせて、繰り返し予定の見え方についても変更が案内されています。定期的な非公開予定を多く持つ人ほど影響が出るため、原文の告知で該当箇所を確認してください。
次の情シス定例で確かめる一つのこと
役員・部門長のカレンダーを誰かが代理管理している場合、その相手に今どの権限レベルが渡っているかを一覧で確認してください。「予定の変更および共有の管理権限」が渡っていたら、それは非公開の予定も含めて全部見えている状態です。
そのうえで、本人に非公開設定の使い方を確認する。この2つが揃わないと、新しい権限レベルは入れても機能しません。
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