提案書を社内レビューに出す。翌日ドキュメントを開くと、コメントが50件ついている。営業からの指摘、上長の質問、誤字の指摘、そして「ここ良いですね」という感想。この中から「直さないと出せないもの」を選り分ける作業に、本文を書いた時間と同じくらいかかる。
しかも指摘は矛盾します。営業は「価格を前に出せ」、上長は「価格の前に課題整理を厚く」。どちらかを選んだ理由をコメントに返し、相手が納得したかを確認して、はじめて本文に手が入る。レビューが1日で終わらないのは、たいていこの往復のせいです。
2026年7月28日から、Googleドキュメントのコメント欄そのものにGeminiが入るようになりました。
Geminiがコメントに対してできる4つのこと
Googleが公開したGemini-powered comment workflowsは、ドキュメント全体のコメントをGeminiが横断して扱えるようにするものです。できることは大きく4つに分かれます。
- コメントの横断的な要約と質問。「Aさんのコメントを全部まとめて」「コメントを踏まえて、まだ解決していない論点は何か」といった聞き方ができます
- コメントの追加。「立ち上げ準備のセクションの数字をBさんに確認してほしい、というコメントを入れて」のように、依頼を代わりに書かせられます
- 返信の下書き。開いているスレッドに対して、文脈を踏まえた返信案を生成します
- 本文の編集提案。「Bさんのフィードバックを反映して導入部を書き直して」と指示すると、編集提案として出てきます。承認すれば本文に適用されます
2026年7月28日から段階的に展開され、表示までに最大15日かかるとされています。もう1点、見落としやすい制約があります。この機能はドキュメントの編集権限を持つユーザーだけが使えます。閲覧者やコメント権限だけのメンバーには出てきません。
制約に見える「編集権限が要る」が、実は運用の分かれ目
編集権限が必要という制約は、単なる機能の線引きではなく、誰がレビューを回すのかを決めろという話に読み替えられます。
社外のパートナーや、閲覧・コメント権限だけを配っている社内メンバーは、この機能を使えません。ということは、コメントの束をさばくのは常に編集権限を持つドキュメントのオーナー側になります。50件のコメントを分類して返す仕事は、いままでどおり書いた本人に残る。ただし、その作業の中身が変わります。
| レビューで発生する作業 | Geminiに任せられるか |
|---|---|
| コメント全体から未解決の論点を抽出する | 任せられる |
| 「対応必須」と「感想」を仕分ける一次分類 | 任せられる |
| 定型的な返信(了解・対応済み・別途相談)の下書き | 任せられる |
| 矛盾する指摘のどちらを採るか決める | 人が決める |
| 決めた理由を相手に納得させる書き方 | 人が書く |
上の3つで浮いた時間を、下の2つに使えるかどうかがすべてです。下2つまでGeminiに任せると、そこそこ整った返信が並ぶだけで論点は決着せず、レビューは同じところで止まります。

先に決めておかないと荒れる3点
使い始める前に社内で握っておいたほうがよいことが3つあります。
1つめは、Geminiが書いた返信をそのまま送らない、という線引きです。返信の下書きは文脈を踏まえて生成されますが、「対応します」と書けてしまうのが怖いところです。まだ判断していない指摘に対して肯定的な返信が送られると、相手は決着したと理解します。下書きは下書きとして読み、送る前に自分の判断を1行足す運用にしておくと安全です。
2つめは、編集提案を適用したあとの差分の見え方です。「フィードバックを反映して書き直して」で本文が広範囲に変わると、他のレビュアーは何が変わったのか追えなくなります。範囲を区切って(このセクションだけ、この段落だけ)依頼するほうが、結果的に早く終わります。長い文書の構造管理そのものはGoogleドキュメントのタブとページなし表示側の話になります。
3つめは、コメントに書かれる情報の扱いです。レビューのコメント欄には、社外に出していない価格や人名が平気で書かれます。それをGeminiが読んで要約する構図になるため、組織としてGeminiに何を読ませてよいかの整理と地続きです。管理者側の設定の考え方はGeminiアプリの一時的なチャットと保持ポリシーで扱っています。
レビューが遅い原因が別のところにある場合
ここまで読んで「うちのレビューが遅いのは、コメントの量ではない」と感じたなら、その直感のほうが正しい可能性があります。よくあるのは、そもそもレビュー依頼の粒度が大きすぎるケースです。完成品を一度に出すから指摘が50件つく。章ごとに出せば、1回あたり5件で済みます。
図やスライドが絡むレビューなら、Googleドキュメント側で図を直接生成・修正できるようになった変更(GoogleドキュメントのGeminiで図解を作る)や、動画レビューを時刻付きコメントで回す方法(Googleドライブの時刻付きコメント)のほうが効く場面もあります。道具を足す前に、どこで止まっているかを1回測る価値はあります。
今週試すなら、この順で
まず、いま進行中のドキュメントを1本選んで「コメントを踏まえて、まだ解決していない論点を挙げて」だけを試してください。それが自分の認識と合っているかどうかで、この機能を業務に組み込めるかの判断がつきます。合っていれば一次分類を任せる、ずれていれば依頼の書き方を変える。返信の自動生成から入らないことが、失敗を避けるコツです。
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