
社内でAIノート系のツールが使われ始めると、情報システム担当のところに必ず来る質問があります。「あれ、うちの見積書とか契約書も読み込ませてるの?」
聞かれた側は困ります。使われていることは分かっている。禁止はしていない。ただ、誰がどのファイルを読み込ませたのか、そのノートを誰に共有したのかを確認する手段が無い。「たぶん大丈夫だと思います」としか言えず、その「たぶん」が通らなくなったところで、慌てて利用停止の通達を出すことになります。
Gemini Notebook については、この問いに事実で答えられる材料が管理コンソール側に用意されました。
何が見えるようになったのか
Google は 2026年9月3日から、Gemini Notebook の監査ログを Workspace 管理コンソールで提供する展開を開始しました。機能の反映には最大15日程度かかる段階的な展開です。
記録されるのは、ノートブックに対する一連の操作です。誰がノートを作成し、どのリソースを追加し、誰に共有したのか。実行した利用者の識別情報、IPアドレス、対象リソースの情報、ノートブックの公開範囲といった軸で追跡できます。これらは管理コンソールのセキュリティ調査ツールおよび監査と調査ツールから参照します。
対象となるのは、セキュリティ調査ツールと監査・調査ツールを利用できるエディションの Google Workspace 契約です。全プランで同じように使えるわけではないため、自社の契約エディションでこれらのツールが使えるかを先に確認してください。ここが前提条件になります。
既定で入るもの、こちらで開けないと動かないもの
この更新で実務上いちばん重要なのは、既定の状態が2つに分かれている点です。
管理コンソール上での監査ログの参照は既定で利用できます。一方で、監査ログを BigQuery へエクスポートする経路は既定で無効です。使いたい場合は管理者が明示的に有効化する必要があります。

この差は、実際の運用で効いてきます。
管理コンソールから見る形は、何か起きたときに調べる用途に向いています。「先月あのノートに何を入れたか」を後から追う分にはこれで足ります。一方、継続的に監視したい・他のログと突き合わせたい・保持期間を自社で決めたい場合は BigQuery への書き出しが必要で、そちらは自分で開けるまで1行も溜まりません。
つまり「監査ログが提供された」というニュースだけ見て安心すると、半年後に長期の記録を遡ろうとした時点で、その期間のデータが存在しないという事態が起こり得ます。必要かどうかを最初に決めておく類の設定です。
見えるようになった後、何を見るのか
ログが取れること自体は出発点にすぎません。取ったログで何を判断するかを決めていないと、管理コンソールに項目が増えただけで終わります。
実務で最初に効くのは、次の2つの観点です。
公開範囲の広いノートを把握する。 ノートブックの公開範囲がログに含まれるため、組織全体に共有されているノートや、外部と共有されているノートを洗い出せます。中身が社外秘の資料から作られたノートが広く共有されている状態は、ファイル自体の共有設定を厳しくしていても発生します。Google ドライブ側の共有設定を締めていても、そこから作られたノートは別経路になるためです。
特定の資料が読み込まれた事実を追う。 リソースの情報が記録されるため、「この契約書がどのノートに入ったか」という方向から追えます。取引先から「当社の資料をAIに入れていないか」と問われた際に、確認して回答できるかどうかの差は大きいところです。
既にアラートの仕組みを組んでいる会社であれば、監査ログを起点にした検知の設計に今回のログ種別を足す形になります。ゼロから作る場合は、まず公開範囲の広いノートの棚卸しから始めるのが現実的です。
禁止ではなく、説明できる状態を作る
AIノート系ツールへの対応は、禁止か放任かの二択になりがちです。禁止すると個人のアカウントで使われて完全に見えなくなり、放任すると冒頭の質問に答えられなくなります。
現実的な着地は、社内のアカウントで使ってもらい、その代わり記録が残っている状態です。今回の更新は、その「記録が残っている」側を成立させる部品にあたります。Workspace 内でのAIノートの位置づけと使いどころを整理したうえで、利用ルールと記録の設計をセットで決めておくと、後から利用を絞る必要が生じたときの痛みが小さくて済みます。
次にやること
管理コンソールを開いて、確認する順番は決まっています。
- 自社のエディションでセキュリティ調査ツール・監査と調査ツールが使えるか
- Gemini Notebook のログ種別が参照できる状態になっているか(展開に最大15日かかります)
- BigQuery へのエクスポートが必要かどうかを決め、必要なら有効化する
3番を先送りにすると、後から遡れる範囲が管理コンソール側の保持期間に縛られます。長期の記録が要るかどうかは、必要になってからでは間に合いません。
社内でのAI利用の記録設計、Google Workspace の監査ログ運用、既存のログ基盤との突き合わせについては、グリームハブの IT・Google Workspace 無料相談で承っています。契約エディションと現在のログ運用によって取れる構成が変わるため、お問い合わせから個別にご相談ください。




